ARTICLEマンションの天井の構造とリノベーション時の注意点
- 公開日:2015.10.16
- 更新日:2023.11.24
どのくらいの天井高があれば開放感を感じますか?
古いマンションは天井高が2.2m程度のものが多いですが、最近のマンションでは2.4m程度が主流で3m近い物件もあります。
リノベーションでは天井高を少しでも上げるためやインダストリアルなスタイルを取り入れるために、
コンクリートスラブ面をあえて見せた空間デザイン=直天井(スケルトン天井)とする設計が良く行われます。
そんな天井にできるかどうか、や天井高があげられるか、にはそもそもの天井の構造が大きく影響します。
今回はそれぞれの天井の構造のメリットや注意点についての話です。
目次
マンションの天井の構造は2種類
マンションの天井の構造は「直天井」と「二重天井」の2種類です。
まずはそれぞれの特徴とメリット・デメリットをみていきましょう。
二重天井とは
二重天井とはコンクリートスラブの下に軽量鉄骨または木による下地材を吊り下げ、その上にプラスターボード(石膏ボード)をビス(先端がとがっているネジ)止めしてクロスなどを貼った天井です。下図はプラスターボードを張る前の下地材の様子です。
最近の分譲マンションはほとんどがこの二重天井になっています。
上図にあるようにコンクリートスラブと天井の間に空間ができます。この空間のことを「懐(ふところ)」といいます。天井の懐には電気の配線やダクトは天井裏を通っており、お部屋の中からは見えません。
二重天井のメリットとデメリット
二重天井は、以下のようなメリットがあります。
・スラブ面は見映えを考慮した仕上げなどをしていないため不陸があったり、コンクリートを打ち込む際の型枠の金具の痕などが残っていたりします。二重天井はこうした粗いスラブ面を隠して、クロスや塗装できれいに仕上げられます。
・天井面に設けられる電気配線や排気ダクトなどが見えないすっきりとした天井を作ることができます。
・部屋うちに出てくる梁型などを隠しながら、フラットで一体化した天井が作ることができます。
・天井面に埋め込み型のダウンライトなどを自由に設けることができます。また、間接照明が入った折り上げ天井を作ることなども可能です。
デメリットは、懐の分だけ天井高が低くなることでしょうか。
直天井とは
直天井とはコンクリートスラブに直接クロスなどの仕上げ材を貼って仕上げた天井です。そのため、ダクトなどを隠すように「梁型」をつくっていたり、ダクトが通るキッチンまわりだけは二重天井にしていたりするので、お住まいの中で一部天井が低くなっている箇所ができている場合もあります。
直天井のメリットとデメリット
直天井の最大のメリットは天井高が高くなることです。
ラフな仕上げのコンクリートスラブ面をあえて見せた空間デザインとするなどの目的でボードや下地材を撤去して直天井(スケルトン天井)とする設計が良く行われます。
リノベーションではラフな味わいのコンクリトートスラブを見せながら排気ダクトや電気配線をあえて露出させて取りつけ、ダクトレールを使ってお気入りにスポットやペンダントを設けるなど、新築の分譲マンションの整然としたインテリアにはない、ちょっとハードな雰囲気の空間が楽しめます。
一方でデメリットとしては、最上階などの場合は特に、外気の暑い/寒いといった影響を直接うけてしまうことになるため、断熱性能がやや落ちてしまい結露しやすいことがあげられます。
また天井を通るダクトなどを隠そうとすると梁型をつくることになって、天井の低い箇所、高い箇所ができてしまいごちゃごちゃした印象になってしまうこともデメリットです。
天井の構造と遮音性
当然、天井の構造が二重天井か直天井かは遮音性にも影響を与えます。二重天井であっても、天井の懐の空気層が共振すると、上階の音が伝わりやすくなってしまう(太鼓現象)というケースもありえます。
ただ、床の構造の話でもお伝えした通り、遮音性は衝撃音の種類やコンクリートスラブの厚さ、施工方法などの影響もうけるので、一概にどちらがよいとは言いきれません。
リノベーションで天井を工事する際の注意点
電気配線の位置
もともとが直天井のマンションの場合、電気配線用の配管や照明器具用のシーリング用の下地などがコンクリートスラブに直接、埋設されていることがあります。
もちろんこの場合も、電気用の配管や照明ダクトレールを露出する形で取り付ければ対応できますが、配線の経路の変更や配線からの電気の取り出しが自由にできません。
また、もともとが直天井の物件は、配管などが埋め込まれている部分のスラブの厚さが薄くなっており、同じスラブ厚の二重天井の物件に比べて、強度や遮音性の面で劣っている可能性があるということも要注意です。
事前に住戸内部の矩形図(かなばかりず。建物の一部を切断して納まりや寸法等を細かく記入した断面の詳細図)や設備図などでスラブ厚や配管経路などを確認しておいた方が無難です。
躯体表しの天井にする際の注意点
さらにリノベーションでコンクリ―トの躯体表しの天井にしたい、といった場合も、もともとが直天井の場合は特に注意が必要です。
直天井では仕上げ材をコンクリートスラブに直接はりつけているため、接着剤がうまくはがれない、クロスがうまくはがれない、といったケースがよくあります。既存の状態次第で必ずしもキレイな躯体表しの天井になるとは限らない、という点は注意が必要です。
逆にもともとが二重天井のお住まいで躯体表しの天井にしたい、という場合はコンクリートスラブに直接なにかを貼っているわけではないため、良い状態で躯体表しにできることが多いです。
また、リノベーション費用についてもリノベーションで二重天井を新たに造る場合と直天井で躯体表しにする場合で「躯体表しにするとリノベ費が大きく節約できる」という誤解が多いのも注意点です。
確かに天井をつくらない「だけ」であれば費用の節約になりますが、躯体表しの場合は電気用の配管をとりつけたり、躯体の状態によっては左官や塗装をほどこしたり、といった作業が必要になります。これらの条件によっては思ったほど費用は安くならない、というのも留意しておきましょう。
天井の構造の見分け方
マンションのリノベーションを考えている方にとって、希望するようなリノベーションができるかどうかを左右することになるので、現状の天井の構造がどうなっているか、は重要なポイントです。
ここでは天井の構造の見分け方をいくつかあげてみます。
照明器具をみる
一番簡単な見分け方は「照明器具をみること」です。
天井にダウンライトが埋め込まれていれば、少なくともダウンライトの器具を埋め込むだけの懐がある、ということになるので、「二重天井」です。
逆にひっかけシーリングの器具が天井に直接ついていれば、「直天井」ということになります。
図面やパンフレットでチェック
もし新築時からリフォームやリノベーションをおこなっていないマンションであれば、新築時のパンフレットや図面をみることで天井の構造がわかる場合があります。
リフォームやリノベーションをおこなったマンションでもそのリノベーション工事の際に作成した図面をみることで判断できる場合があります。
たたいてチェック
非常に原始的な方法ですが、天井をたたいてみることでも二重天井かどうかが判別できることがあります。
直天井であればコンクリートスラブに直接ボードや仕上げ材が貼ってあるため、たたいた時の音は殆ど響きません。逆に二重天井であれば、中が空洞になっている箇所があるため、音が響くところがあります。
点検口からのぞいてチェック
多くのマンションではお風呂の天井に点検口があります。点検口をあけると天井のコンクリートをみることができます。
この点検口からまわりを見渡してみると、二重天井になっているかどうかがわかる場合があります。
ただ、多くの場合、お風呂のまわりには梁があって、点検口から遠くまでまわりを見渡すことはできません。
それでも以下のようにすることで二重天井かどうかを推測することは可能です。
・点検口をあけた状態でお風呂の床からコンクリートスラブまでの高さをはかる(①)
・お風呂の床には排水管が通るため、コンクリートスラブまでの床下はおよそ10~15cm
・お風呂の床からスラブまでの高さに10~15cmを足す(②)
これで床下のスラブから天井のスラブまでの高さがわかります。
お風呂の床も廊下やリビングとフラットになっているようなお住まいでは①の高さとそれぞれのお部屋の天井高を比べてみて、ほぼ同じならば直天井、10㎝くらい低くなっていれば二重天井、といった具合に推測ができます。
お風呂の床があがっているようなお住まいであれば、②の高さとそれぞれのお部屋の天井高を比べてみると同じように予測がたてられます。
ただ、いずれも「予測」でしかありません。マンションによっては思わぬところに梁があったり、二重天井と直天井を併用していたりするので、リノベーション会社の担当者にしっかりみてもらってから判断するようにしましょう。
マンションの天井高はどれくらい?
建築基準法では居室の天井高は2100mm以上、要は2.1メートル以上、と定められています。2100mmギリギリの天井高のマンションはあまりありませんが、古いマンションでは2200mmくらいの物件も多くあります。
現在標準的な天井高は2400mm程度ですが、物件によっては2500mmや2700mmといったものも出てきています。
リノベーションで天井はどのくらい高くなる?
古いマンションで2200mmや2300mmといった天井高だった場合も、もともとが二重天井になっている場合であればリノベーションによって天井高をあげることが可能です。
古いマンションでは天井の懐がおおきく、300mmくらいあるケースもあります。リノベーションによって天井高をしっかりとってお部屋の印象が一気にかわったなんてこともあります。
ただ、どのくらい天井高があげられるか、は床の構造をどうするか、にも影響されるので一概にはいえません。
先に述べた「お風呂の点検口から天井のスラブまでの高さをはかる」といった方法で床下スラブと天井スラブの間がどのくらいなのかがわかります。
そこから例えば、スラブ間が2700mm、二重床にする(-100mm)、二重天井にする(-100mm)ので居室の天井高は2700-100-100=2500mmといった具合に目安を計算することができます。
但しこれらはいずれも「目安」です。マンションではコンクリートスラブの高さが一律でない場合もあれば、予想外のところに大きな梁がかくれている場合もありますのでリノベーション会社にしっかり現地調査してもらった上でアドバイスをもらいましょう。
スケルトン天井が印象的なリノベーション施工例
モールテックスで仕上げたキッチンカウンター、躯体現しの天井に、床は無垢のフローリングを採用。リビングの真っ白な壁は薄塗りでフラットに仕上げた漆喰壁。様々な素材を楽しめるリビングです。
天井は躯体表し。シルバーやブラックのライティングレールや配管、レンジフードなどによって無骨さを散りばめながらも、白の壁紙や無垢フローリングを組み合わせることで、温かみのあるリビングに仕上がりました。
特徴ある二重天井のリノベーション施工例
ナチュラルな家具があうようにベージュ、白、グレーをメインカラーにおいたお住まい。キッチンのダクトつくったR(曲線)の天井の美しいラインが見事に調和しています。
キッチンの天井を木目調のクロスで仕上げてアクセントにしています。
まとめ
天井の高さや天井の雰囲気はお部屋の過ごしやすさに大きく影響します。集中して「おこもり感」を出したいお部屋では天井が低い方がよい、というケースもありますし、リビングの天井は高くして開放感をだしたい、というケースもあります。
マンションの天井の構造は二重天井と直天井の二種類です。それぞれのメリットやデメリットを理解した上で、元々の構造がどちらなのか、リノベーションでそれらを変えた方がよいのかどうか、を考えるようにしましょう。
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