中古マンションのメリットとは?新築マンションとの比較

新築マンションと中古マンションを比較したとき、中古マンションのメリットは以下の3点です。

・中古マンションは新築マンションよりも安く、資産価値が安定する
・中古マンションのほうが新築マンションより物件の選択肢が圧倒的に多い
・中古マンションのほうが新築マンションより管理状態を見極めやすい

一方でこれらはすべて「中古マンションの物件を適切に選ぶことができれば」得られるもの。

その理由を紐解いていきます。

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リノまま編集部

リノままは「大きな企業の中の小さな設計事務所」として設計・工事・不動産それぞれの専門知識をもった少数精鋭のチームでひとりひとりのお客様と向き合っています

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中古マンションの相場価格の動向

昨今では「中古マンションの高騰」がいたるところでさけばれます。そもそも本当に「中古マンションは安い」のでしょうか?

中古マンションの高騰

10年以上前は「中古マンションは安い」というイメージがありましたが、現在はそうでもありません。

東京カンテイの発表をもとにすると、2017年の7~9月期、首都圏の中古マンションの坪単価は168.6万円、2023年の7~9月期では226.2万円。実に34%も値上がりしています。

これは簡単に言うと2017年に3000万円で買えた物件が2023年には4000万円になっている、ということです。

単純に中古マンションの価格推移だけで考えると、今や中古マンションは「安い」とはいえません。

首都圏の中古マンション・新築マンションの坪単価              東京カンテイ発表資料より

時期中古マンション 坪単価新築マンション 坪単価
2017年7-9月期168.6万円315.0万円
2023年7-9月期226.2万円435.0万円

新築マンションと中古マンションの価格差

高騰している中古マンションですが、「新築マンションとの価格差」という視点でみるとどうでしょう?

上記の東京カンテイの発表によると2023年の7~9月期、首都圏の新築マンションの坪単価は435万円、一方で中古マンションの坪単価は226.2万円。

同じ広さ、エリアで比べると理論上では新築は中古の192%もの価格になる、ということになります。

これが同じ2017年の同じデータをみると新築の坪単価が315万円、中古の坪単価が168.6万円で新築価格は中古価格の187%となっています。

中古マンションの高騰がよくいわれますが、新築も中古もどんどん値上がりしている、という状況で、新築と中古の間には依然190%前後の価格差がついている、ということになります。

したがって、中古マンションは「新築よりは安い」というのは今でも大きなメリットです。

おまけにこれだけ新築との価格差があれば、先に述べたようにリノベーション費用は資産価値に十分に反映されるとは言えないものの、「リノベーション費用を見込んでも新築よりは安い」という点には変わりありません。

新築マンションとの比較の上では「新築よりも安く、新築よりも自分好みの住まいが手に入る」という中古マンションの魅力は今も続いているのです。

新築マンションと中古マンションの供給戸数

もうひとつ見逃せないのが「供給戸数」です。2019年時点では首都圏のマンション市場において新築マンションの供給戸数が20.9%を占めていました。

それが年々低下していき、現在では新築の供給戸数は13.2%にすぎません。

新築と中古をあわせたマンション市場全体の供給戸数はコロナ禍の時期を除くと62,000戸前後で大きな変化はありません。

それだけ新築マンションの商品が減って、一方市場で売り出される中古マンションが増えてきた、ということです。

新築マンションと中古マンションの価格差は相変わらず大きいものの、物件の選択肢については中古マンションのほうが圧倒的に多い、ということがいえます。

中古マンションの資産価値

続いて「中古マンションのほうが資産価値が安定する」という点からみていきましょう。

下記は2021年の首都圏の中古マンションが築年数ごとにどんな価格で販売されたか、を示した表とグラフです。物件それぞれの広さが異なるので1㎡あたりの単価におきかえて、マンションの取引価格に築年数がどんな影響を与えるか、をまとめています。

当然ながら築年数が古くなると物件はどんどん安くなっていきます。でも築26年超の物件になると、ほとんど価格の下落がとまっていることがわかります。

築30年前後の中古マンションが狙い目?

このデータだけをみて考えると、築年数26~30年あたりの中古マンションを購入すれば、「物件そのものの資産価値はあまり下がらない」ということになります。逆に新築を購入すると築31年を超えることには70%近く資産価値が下落してしまう、ということになります。

今から30年前、遡るとバブルが崩壊し、土地神話が崩れ、販売業者は立地志向から建物の魅力で競い合っていた時代です。この年代前後のマンションは共用部分を含めた建物グレードが高く、経年による値下りも緩やかになっているのかもしれません。

リノベーション費用は中古マンションの価格に反映されない?

中古マンションをリノベーションしてから販売する、というケースにおいて、かけたリノベーション費用がそのまま販売価格に反映されるとは限りません。

以下は2020年に実際に同じマンションの棟内で販売されていたリノベーションされていない古いままの中古マンションと業者によるフルリノベーションがなされたリノベ済みマンションの取引価格です。

例)都内某所/中古マンション/68㎡/築40年程度

業者によるフルリノベーション済み中古マンション     3,200万円            
リノベーションなし(古いまま)の中古マンション     2,460万円
両者の差額      740万円
1㎡あたりの差額 11.5万円

リノベーション済みの物件は業者が内装をフルリノベーションしているため、住宅設備はすべて新品、内装に関しては新築とかわりません。

それでもここでみるように両者の差は740万円、1㎡あたりに換算すると11.5万円ほどです。

古いマンションを購入して自分好みにリノベーションしようとすると1㎡あたり税込18~20万円以上はリノベーション費用がかかってきます。

つまり、中古を買って+リノベーションをしても、必ずしもかけたリノベ費が資産価値に反映されるとは限らない、ということです。

その理由は以下の2点です。

・それぞれ「自分好み」にこだわってリノベしたお住まいが必ずしも多くの方に広くうけいれられるとは限らない
・業者による「リノベーション済みマンション」では決まった仕様に基づいて設計しているため資材も設備もコスト が安く対応できる

仮に1000万円のリノベ費をかけてリノベーションしたマンションでも、売却する際に1000万円分高く売れるとは限らない、ということです。

以上から、「資産価値」の観点で築20~30年前後の中古マンションはねらい目ではありますが、「リノベーション」で自分たちがこだわった分については必ずしも資産価値に反映されるわけではない、という点だけは注意しておきましょう。

中古マンションの管理状態

最後に中古マンションの管理状態についてみてみましょう。

中古マンションはすでに数十年にわたってそのマンションが管理されてきた、という実績があります。

当然ながら管理状態のよいマンションも悪いマンションもありますが、その歴史は以下のような資料から垣間見ることができます。

・重要事項調査報告書
・長期修繕計画
・修繕履歴
・総会議事録
・理事会議事録

どんな方が管理組合を構成していてどんな運営をしてきたか、がみえるため、管理の状況に関する「情報が多い」という点はメリットです。

一方で新築マンションでは、どのような管理組合の運営になるか、どのような管理状態になるかは「未来」のことなので未知数です。

中古マンションについては管理のよしあしの見極めにスキルが必要になる点はデメリットですが、しっかり調査して良い物件をみきわめられることができれば物件選びの上ではメリットになります。

具体的なチェックポイントとチェック方法はコチラ

⇒リノまま【知る・調べる】「マンション管理」のチェックポイント 中古マンションを蝕む「最大の敵」とは?

中古マンションの本当の良さとは?

ここまでみてきた通り、中古マンションは

・中古マンションは新築マンションよりも安く、資産価値が安定する
・中古マンションのほうが新築マンションより物件の選択肢が圧倒的に多い
・中古マンションのほうが新築マンションより管理状態を見極めやすい

というメリットがあります。

中古マンション事態の価格高騰がさけばれる現在でも、新築マンションとの比較において、この優位性は変わりません。

ただしここまで見てきたように、これらの優位性は「中古マンションのよい物件を選ぶ」ことが条件になります。

2023年の中古マンション市場では「高く早く売れる物件」と「値下げしてもなかなか売れない物件」の二極化傾向がみえてきています。

物件の見極めを失敗すると「資産価値が安定する」ということにはなりません。

管理状態についても同様です。中古マンションは新築マンションより情報が多いという利点はあるものの、管理状態の見極めをしっかりおこなわないと「管理状態の悪い」中古マンションを買ってしまうことにもなりかねません。

中古マンションは物件の選択肢もそれぞれの物件の管理状況も「情報が多い」ゆえに、目利きが重要になってくるのです。

新築マンションのように未知数のものを購入するのではなく、数多くの情報の中からよいものを見極めて購入できる、というのが中古マンションの「本当の良さ」といえるでしょう。

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