中古マンションの給水管・排水管の老朽化対策

中古マンションを購入にあたって、一番不安を感じるのは「住み始めてから不具合がおきないか」でしょう。

リノベーションやリフォームをバッチリすれば見た目はキレイになりますが、安心して長く住まうためには
「目に見えない部分」こそが重要です。

中でも給水管や排水管の状態がどうなっているか、というのは最重要ポイントです。
この記事ではマンションの給水管や排水管がどのようになっているか、老朽化に対してどんな対策をすべきか、
を解説します。

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リノまま編集部

リノままは「大きな企業の中の小さな設計事務所」として設計・工事・不動産それぞれの専門知識をもった少数精鋭のチームでひとりひとりのお客様と向き合っています

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給水管の役割とは

当たり前のことですが、マンションの各住戸にはキッチンや洗面といった水回り設備が必ずあります。こういった水回り設備には水道水を引き込む給水管が接続されています。

公共の水道管は通常マンションの建物が面する道路の地下に埋設されています。そこからマンションの建物の中に水道水を引き込み、各階を縦に貫通し水を上下に供給するために使用される「竪管」を通って各フロアの住戸に供給しているのが給水管です。

従って、マンションの共用部として各住戸に水道水を引き込むまでの部分と、各住戸の専有部内でキッチンや洗面などの水回り設備に水道水を供給する部分があります。

給水管の種類

各住戸に水道水を供給する重要な役割をになう給水管。どんな材料でつくれられているかはマンションが建設された年代ごとに様々です。

その中でも代表的なものが白鋼管、ライニング鋼管、塩ビ管の3つです。

・白鋼管とは炭素鋼鋼管に亜鉛メッキを行った鋼管です。とにかく丈夫であることが特徴ですが、経年とともにサビが発生するため、「赤水」といって水道水が赤く濁ってしまうトラブルが発生することがあります。現在は水道管への亜鉛メッキ鋼管の使用は禁止されていますが、1980年以前に建築された建物によくみられます。

・ライニング鋼管とは硬質塩化ビニルやポリエチレンといった樹脂で給水管の内部を太田鋼管です。水が通る管の内部が樹脂になっているため、管内部でのサビの心配がありません。耐久性・耐食性に優れているにも関わらず、コストも低いです。

・塩ビとは、正式名称が塩化ビニル管と呼ばれるものです。腐食に強い塩化ビニル樹脂を主原料としています。耐薬品性・耐食性・耐久性に優れているだけでなく、管の内面が滑らかで摩擦抵抗が小さいため、汚物の付着が少なく効率よく通水できます。

最近ではその他の樹脂管やステンレス管なども登場し、耐久性により優れた素材が使用されるようになってきています。

給水管の耐用年数

これらの給水管の耐用年数は、白鋼管では15~20年程度、ライニング鋼管では20年前後、塩ビ管などの樹脂管では30年以上、ステンレス管では100年、といわれています。

あくまで耐用年数は目安になるので実際には管の状態に応じたメンテンナンスが必要になりますし、給水管同士をつなぐ「継手」部分のメンテナンスも必要になってくるので、どのマンションでも30年に一度以上の頻度で何らかの維持修繕のための工事は必要になってきます。

排水管の役割とは

排水管も同様で、マンションの各住戸の水回り設備からでる排水を外部に排出するためのものです。排水は雨水・雑排水・汚水の3種類があります。雨水はその名の通り雨などで外部から入ってくる水です。屋根やバルコニーにたまってしまわないように排出します。雑排水はキッチンや洗面、お風呂などからでる排水で、汚水はトイレを流した際の排水です。

これらは各住戸の専有部から発生した排水をマンションの各フロアを繋ぐ排水縦管にあつめて外部に排出していきます。各住戸の排水が集まってくる排水竪管はマンションの共用部になっています。

排水管の種類

マンションの排水管にも様々な材料が使われています。代表的なものが白鋼管、塩ビ管、鋳鉄管です。

白鋼管、塩ビ管については給水管のところで説明した通りで、白鋼管には腐食のリスクがあります。

鋳鉄管とはその名の通り鋳鉄製の管のことです。耐久性があり、熱や圧力にも耐えるため、高層建築などで使用されることがあります。しかし、重量があるため、施工や取り扱いには注意が必要です。

排水管の耐用年数

これらの排水管の耐用年数についても同様で、白鋼管では15~20年程度、塩ビ管などの樹脂管では30年以上、鋳鉄管は40年程度といわれています。

マンションの配管の老朽化リスクとその対策

マンションの給水管や排水管などの老朽化が進むと棟内での漏水事故が増えてきます。配管の腐食が進んで穴が開いてしまったり、配管が詰まってしまったりするためです。

共用部の配管からの漏水事故については管理組合の費用負担で漏水箇所の補修や被害住戸への補償をおこないますが、もし専有部の配管から漏水事故がおきてしまうとこういった漏水箇所の補修や被害住戸への補償についてはあくまで当該専有部の所有者の費用負担になってしまいます。

このように住民にとって大きな影響のある給水管や排水管については適切な老朽化対策が必要です。多くのマンションでは1年に1回程度、各住戸内に業者の方が入って排水管の高圧洗浄をおこなっています。また配管の交換となると非常に大きな工事を伴うため、定期的に配管の状況を調査しているマンションもあります。

※閉塞化した排水管

共用部の給水管・排水管(竪管)の老朽化対策

築30年を超えるようなマンションでは何らかの形で配管の老朽化対策は必須になってきます。配管の老朽化対策としては「配管の更新」と「配管の更生」がおこなわれています。

修繕の方法としては、古い配管を新しい配管に交換するというのが「更新」です。配管を一新すると当然ながら管の耐久性が高まり長く使用することができます。

但し、配管を交換するとなると工事は期間が長くなり費用も大きくかかってきます。

また、共用部の配管とはいえ、各専有部の配管と接続しているものであるため、専有部内に入った上で壁や床の一部を壊して工事を行う必要があったり、工事の実施中は一時的に水道やトイレが使えない住戸がでてきてしまったりするため、住民の方の理解と協力は不可欠です。

他には排水管内のさびや汚れを落とし、樹脂でコーティングを行い管内に新たな層をつくるライニング工法というものがあります。よく配管の「更生」の工事として長期修繕計画などに記載してあります。

こちらは工事期間が短く費用も比較的おさえられますし、専有部内に立ち入っての作業も限定的になります。但し、この「更生」工事をおこなった場合、その10年程度後には配管の更新が余儀なくされます。なぜなら管の内部をコーティングしているだけなので、何度もできる工事ではないからです。

※マンションの専有部内にはこの写真のように排水管の竪管が通っています。この管自体は「共用部」になるためリフォームやリノベーション時に壊したり移動したりすることはできません。

専有部の給水管。排水管(横菅)の老朽化対策

専有部の給水管、排水管についてはリフォームやリノベーションの工事の際に一新してしまうのが一番です。配管の工事だけのために壁や床を壊して再度補修しなおす、という形にするとどうしても二度手間になってしまいます。

配管の工事は見えない部分なのでどうしても後回しにしがちではありますが、大規模なリフォーム、リノベーションなどで内装の壁や床を剥がすタイミングや水回り設備の交換のタイミングなどで一気に対応できれば、住んでいる方の負担も減るので安心です。

給水管や排水管はいずれも共用部から専有部につながっているものです。
専有部として工事できる範囲は一般的には以下の範囲です。

・給水管 水道メーターよりも住戸内室内側の部分
・排水管 パイプスペース内の排水竪管から専有部に伸びる管の「継手部分よりも室内側」の部分

特に排水竪管の継手までの部分については勝手に切断してしまうと大きな問題になります。一方でこの継手の向きや長さによってはリフォームやリノベーションの際の水回り設備の移動に制限がでてきます。リフォーム会社やリノベーション会社にきちんと調査してもらった上で工事をすすめましょう。

※竪管だけでなくこの写真のように竪管に接続する管の継手まで、が共用部です。この継手までの向きや長さがリノベーションのプランに影響することがあります。

リノベーションにあたっての注意点は以下も参考にしましょう。

⇒リノまま【知る・調べる】水廻りの移動

専有部の給水管、排水管(横菅)の更新時の費用負担

マンションによっては共用部の配管を更新する際、同時に専有部の配管の更新もすすめる、というケースもあります。

その際の費用負担は
・全住戸管理組合の修繕積立金から負担する
・専有部の配管の更新も希望する住戸からは追加費用をうけとって対応する
と様々なパターンがあります。

また、専有部の所有者の方が自分たちのお住まいのリフォームやリノベーションと同時に配管の更新を行う際に、管理組合側でその費用を一部補助してくれる、といったケースもあります。

あくまで原則は「専有部の工事は所有者自身が負担」という形ではありますが、マンションごとに様々なルールがあるので、配管の更新時には管理組合に確認しながら進めるとよいでしょう。

スラブ下配管に注意

古いマンションなどでは「スラブ下配管」といって、下の階の天井裏に自分たちの住まいの排水管が通っている、逆に自分たちの住まいの天井裏には上階のお住まいの排水管が通っている、といったケースがあります。

こういった場合は排水管を更新しようとしてもそもそも下の階の方のお住まいに立ち入って天井を一部壊した上で管を交換する、ということになります。

そのためそもそも管を更新するにあたっても下の階の方の理解や協力を得られるかどうかで工事ができない可能性がでてきますし、マンションによってはこういった他の住戸の天井裏を通っている部分について「共用部」と定義している場合もあります。

いずれにしてもこのスラブ下配管に該当する場合は配管の更新には注意が必要です。

専有部は給湯管も注意

専有部の配管では給水管や排水管の他に給湯管にも注意が必要です。給湯器から室内にお湯を送っている管です。

この給湯管は銅管や樹脂管でできていますが、特に銅管の給湯管は耐用年数が20年程度となっており、ピンホールとよばれる小さな穴ができてしまうことがあります。

そのため給湯管に銅管を用いているマンションでは棟内全体で漏水事故が多発するケースもあり、マンションでの漏水事故の原因で最も多いのがこの給湯管からの漏水といわれることもあります。

リフォームやリノベーションの際には給湯管の更新もわすれずに対応しておきましょう。

中古マンション購入の際の注意点

中古マンション購入時にはこれまでみてきたような給水管・排水管の状態をしっかり見極めておくことが重要です。

配管の調査状況まではなかなか調べることは難しいですが、
・マンションの棟内で漏水事故がどの程度発生しているか
・長期修繕計画上で給水管や排水管の更生工事や更新工事を見込んでいるか
・これらの配管の工事のために必要な修繕積立金の目途はたっているか
といった内容であれば比較的容易にチェックすることができます。

実際に購入した後の日々の暮らしに大きな影響を与えるポイントですので、目に見える部分だけではなくこれらもしっかりチェックして安心して暮らせるお住まいかどうか、も見逃さないようにしましょう。

リノまま流、物件選びの極意はコチラから

【リノまま/知る・調べる】 中古マンションの物件選びの極意 物件調査や内見のポイントと注意点

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