ARTICLE無垢フローリングの魅力とマンションのリノベーションにあたっての注意点
- 公開日:2019.7.28
- 更新日:2023.12.20
マンションで無垢フローリングを採用する方が増えてきています。今回は、無垢フローリングのメリットとともに、防音対策やリノベーションの事例、お手入れの方法についてご紹介いたします。
無垢フローリングは、自然の風合いや温かみが感じられ、マンションリノベーションでもよく選ばれる床材です。ナチュラル志向の高まりとともに人気がありますが、施工費用やメンテナンス方法など、気になることも多いですよね。
この記事では、そんな無垢フローリングの特徴や魅力をご紹介していきます。
無垢フローリングを活かした、「リノまま」でのリノベーション事例も合わせてご紹介しますので、無垢フローリングの魅力を感じ、リノベーションプランの参考にしてください。
目次
無垢フローリングと合板フローリングの違い
床材として人気のあるフローリングには、大きく分けて「合板フローリング」と「無垢フローリング」の2種類があります。
<フローリング断面図>
>無垢フローリングの短所・長所、メンテナンスについて。|ユキさんのリフォーム業務日誌
合板フローリングは、薄くスライスした合板を複数枚貼り合わせたフローリングです。
木目や色のバリエーションも豊富で、高い遮音性能など、すぐれた機能性をもつ床材もありますので、好みに合わせて選択できることが特徴です。
合板を貼り合わせる際に木目の向きを縦横交互にしているため、暑さや寒さによる伸び縮みしにくく、素材としての安定性も魅力です。
そのため新築マンションなどでは殆どが合板フローリングを採用しています。
一方、無垢フローリングは、100%天然木を使用したフローリングです。
合板フローリングと比較すると高価になりますが、自然な肌触りや質感を感じることができ、年数を重ねるごとに味わいが増す点で、自然素材を好む方には人気の高い床材です。
新築マンションでは、平均的な好みに合わせやすく、コストを抑える理由で、合板フローリングを使用することが主流となっていますが、マンションリノベーションでは、本物の木の魅力を感じられる無垢フローリングを選ぶ方も多くなっています。
無垢フローリングの魅力
天然木の風合いや感触、使い込むほどに増す自然の味わいなど、様々な表情を楽しむことができるのが、無垢フローリングの大きな魅力。
ここでは、そんな無垢材ならではの魅力をお伝えします。
木の香りを楽しめる
無垢フローリングのお部屋は、自然のいい香りが漂います。
この香りの正体は、無垢材が持つ「フィトンチッド」という成分。
この成分にはリラックス効果があると言われており、消臭や抗菌効果も併せ持っています。
「フィトンチッド」の効果は木製品であっても持続するため、無垢フローリングのお部屋で暮らすことで、お家に居ながらにして森林浴の気分を味わうことができます。
素足で歩きたくなる心地よさ
無垢フローリングは100%天然木を使用しているため、自然で高い調湿作用をもつことが特徴。
お部屋の湿度が高い夏には床材が水分を吸収して、床がベタベタせずサラっとした感触です。逆に、湿度が低い冬には、床材自体が水分を放出して、お部屋の湿度を調節し乾燥を防いでくれます。
また、熱伝導率が低いために、冬でも足元から熱が奪われることが少なく、一年中素足で過ごせるような心地よさです。
経年変化で趣が出る
無垢フローリングは、経年変化によって天然木ならではの風合いが楽しめます。
合板フローリングでは、表面の突き板が剥がれ下の合板が見える場合があるなど、劣化が目立つことも多いのですが、無垢フローリングなら、長年の暮らしの中でできた細かな傷や日焼けによる変色も、深い味わいに感じられます。
適切なメンテナンスを行えば、長く使い込むほどに風合いが増す。これは無垢フローリングならではの魅力です。
無垢フローリングの注意点
無垢フローリングは天然木をそのまま活かした素材なので、その魅力と同様に注意点もあります。順にみていきましょう。
自然に変形する
無垢材は生きている木と同様、空気中の湿気を吸収・放出し、わずかに伸縮を繰り返しています。そのため、季節によってつなぎ目が広がることもありますし、きしみ、歪み、反りが発生することがあります。樹種により傷つきやすいものや、色ムラがある場合もあります。
杉などのやわらかい樹種の無垢床はどうしてもキズがつきやすいです。
熱で反りや歪みがでる
温水ファンヒーターやペレットストーブ等の暖房機器を使用する際には注意が必要です。
無垢材は天然の木材なので温風が当たる箇所だけ床材が大幅に変形してしまう場合があります。ホットカーペットについても同様の理由から使用はあまりすすめられません。
また、無垢材は床暖房が使えないものが殆どです。上記同様に熱によって変形してしまうためです。
太陽光や化学ぞうきんなどで変色する
無垢材は太陽光の紫外線の影響で、赤身色が抜け、長い年月が経つと飴色に変化
します。化学ぞうきんやお掃除シートの有機溶剤の影響でシミができることがあります。
改めて繰り返しますが無垢材は「天然木」です。太陽光や熱、溶剤などで変形変色してしまいます。カーペットなどをしくこともできるだけ避けて、床材に呼吸をさせてやることが大切です。
キズや変色、小さな隙間などはすぐにできるものなので、こういった特性も含めて楽しめる方におススメの床材です。
それらがどうしても気になる方は、反りや隙間の心配が少ない、無垢に近い質感を持った挽き板と呼ばれる鋸で挽いた厚みをもったの板(2~3ミリ)を張った合板フローリング(挽板フローリング)にする、という選択肢もあるので、リノベーション会社に相談してみましょう。
マンションで無垢フローリングを使う場合の防音対策
マンションなど集合住宅では、階下への音漏れは気になりますよね。
騒音はご近所トラブルにつながることも多いので、万全の対策をとりたいものです。
分譲マンションでは、使用できる床材にL40、L45といった遮音等級(L値)を定めていることも多く、管理組合への申請が必要な場合もありますので注意しましょう。
一般的な合板フローリングでは、フローリング材自体に遮音機能を持つものもありますが、無垢フローリングを使用する場合には、遮音対策が重要です。
ここでは、無垢フローリングを使用する場合の主な防音対策を2種類ご紹介します。
※床の遮音性については以下の記事でも詳しく説明しています。
二重床にする
マンションの二重床とは、建物の土台であるコンクリートスラブの上に、防振ゴムについた支柱を立てることで床を支える構造です。
二重床にすることで、コンクリート部分と内装部分の間に空間ができ、衝撃音を軽減することができます。
ただし、二重床構造であっても、コンクリートスラブに十分な厚みがなければ、衝撃音を軽減する効果が得られないこともありますので注意しましょう。
床から伝わる音には、軽いものを床に落としたりスリッパで歩いたりすることで生じる、軽く高い衝撃音である「軽量床衝撃音」と、床の上で飛び跳ねたり椅子を引いたりすることで生じる、鈍く低い衝撃音である「重量衝撃音」に分類されます。
二重床により緩和が期待できるのは「軽量床衝撃音」で、「重量衝撃音」は、スラブの厚さによって遮音性能が変わるため、二重床であっても期待する遮音効果が得られない場合があります。
防音マットを敷く
防音マットは、遮音材と防音材を組み合わせて作られたシートで、コンクリートスラブとフローリングの間に敷くことで、防音効果が得られます。
マンションでフローリングを施工する場合、定められた遮音等級(L値)条件をクリアできず、無垢フローリングを張ることができないこともありましたが、防音マットを敷くことで無垢フローリングでも防音性能を確保することが可能になっています。
マンションで無垢フローリングにする場合の費用
リノベーションやリフォームの費用は大きくは「材料代」と「工事の手間代」にわかれます。
「材料」に関してはフローリング材のお値段、ということになりますが、フローリングは通常、ケースごとに注文する形になり、1ケースで1.53㎡貼ることができるものです。そのため6帖のお部屋(9.9㎡)であれば、7ケース必要です。
1ケースあたりの定価は合板フローリングだと税抜5000円程度のものもある一方で、無垢フローリングでは税抜1万円を超えるものが多く、高いものをみていくときりがありません。
一方で工事の手間代の方は少し複雑です。
まず床を無垢フローリングにするためには通常以下のような工程が必要になります。
1 既存の床を解体する
2 必要に応じて床のレベル(水平)を調整する
3 「置床」をつくって二重床にしてべニアの「捨て貼り」を貼る
4 これらの上に無垢フローリングを貼る
元々二重床のお部屋で、既に置床がある/状態もよく再利用できる、といった場合は1~3の工程が大幅に減ります。また「上貼り」といって既存の床を解体せずにその上に薄いフローリングをそのまま貼り付ける、といった工事になるとそもそも1~3の工程が不要になります。
また、床を解体して二重床にする、といった工事ではお住まいの一部だけ床をかえる、といったことは難しいので、お住まい全体の床をつくりかえることになりますし、そうすると扉などの建具もつくりなおすことになりますし、間取りによっては間仕切りや天井をつくりなおす、といった工事も必要になる場合があります。
従って、リノベーション費用としては、特定の場所だけ/既存の床の上に貼るといった工事では20万円程度でできることもありますし、元々の下地(二重床の置床)の部分を補修する程度で再利用できるのであれば50万円程度でできることもあります。
但し、お住まいの床全体の下地をつくりなおす、といった工事になると壁や天井、建具など他の箇所への影響もでるため、フルリノベーションに近い費用として1000万円以上かかってくる場合もあります。
このようにリノベーション費用は非常に複雑な要件がからむため、ネットなどの相場感を鵜呑みにするのではなく、信頼できる会社に個別の事情を相談した上で確認するようにしましょう。
無垢フローリングを活かした事例
本物の天然木の無垢フローリングは、スタイルによらず、空間のグレードを間違いなくアップさせてくれます。
自然のやわらかな温かみや風合い、天然木の香りが感じられる無垢フローリングのお部屋に憧れる方も多いのではないでしょうか。
「リノまま」のリノベーション事例から、無垢フローリングを使用した魅力的な事例を3つご紹介します。
〇リノベーション事例「ミニマルで豊かな家」
居室を囲むように窓側に配置した廊下が特徴的な、マンションリノベーションプラン。広い空間に光があふれる素敵なお部屋です。
玄関からダイニングにつながる床はすべてモルタルで仕上げ、塗装風の白いクロス貼りの壁と合わせて、白を基調としたミニマルスタイルに仕上がりました。
リビングに張ったオークの無垢フローリングが、白い空間を引き締めるアクセントになっており、全体的に落ち着いた温かみのある雰囲気を作り出しています。
〇リノベーション事例「自由で等身大な暮らし」
「のびのび」「リラックス」をコンセプトに、「気兼ねなくリラックスできる、等身大の自分の部屋」を形にしたリノベーションです。このプランの特徴は、存在感のあるリビング。
コンクリート打ちっ放しの天井に、杉の足場板を用いた無垢フローリングで、やわらかく温かみのある空間が広がります。
さらに、壁はこだわりの漆喰塗で仕上げ、一見シンプルに見えるリビングに素朴な風合を演出しています。
杉の無垢材は傷つきやすい素材ですが、日々の暮らしの中でつく小さな傷も、住まいに深い味わいを与えてくれることでしょう。
「等身大の自分の暮らし」に合わせてお部屋も変化していく、そんな心地よさがいつまでも味わえます。
〇リノベーション事例「高さで繋ぐ。」
このお部屋のリノベーションでは、とことん「高さ」に拘りました。
特にお部屋の中でも存在感のあるキッチンやリビングでは、随所に「高さ」への拘り、アイデアが光ります。
木材の質感を活かし、時間の経過とともに味わいが変化する天井ルーバーの「高さ」。
料理をしている時も家族との会話を遮ることのない、キッチンの腰壁の「高さ」。
遊んだり、本を読んだりと、お子様のお気に入りの場所になっている、リビングの小上がりの「高さ」。
どの場所も、リノベーション現場で何度も確認して、心地よく暮らすための「丁度良い高さ」を見つけました。
そんな「高さ」への拘りがつまった住まいでは、いつも笑い声の絶えない、素敵なご家族の暮らしが続きます。
無垢フローリングのメンテナンス方法
「無垢フローリングはお手入れが大変」というイメージを持たれていませんか。
でも実は、合板フローリングとほぼ同じお手入れでOK。特別で面倒なお手入れは不要です。
ウレタン塗装や自然塗装など、フローリングの塗装状態でお手入れ方法が多少異なることもありますが、基本のお手入れは、大きいゴミを掃き寄せて掃除機などで吸い取り、乾いた雑巾で拭くだけで大丈夫です。
ここで注意点は、水拭きはしないほうがよいということ。
無垢フローリングは天然木ですので吸水しやすく、劣化の原因になってしまいます。
比較的水に強い塗装を施したフローリングであれば、固く絞った雑巾で拭く程度であれは問題ありませんが、塗装の下は無垢素材ですので、水に濡らしたモップで拭くようなお掃除は避けてください。
また、ワックスをかける場合にも注意が必要です。
塗装によっては、ワックスをかけることでムラやシミの原因になることがありますので、塗装の種類にあったワックスを使用し、塗り方や塗布量等はワックス販売メーカーの手順に従いましょう。
リノベーションするなら、素足で歩きたくなる床で暮らそう
無垢フローリングは、天然木の種類や色合いも豊富で、お部屋の雰囲気やスタイルに馴染みやすい床材です。
合板フローリングと比べると、施工費用が比較的高くなり、傷つきやすいといったデメリットもありますが、住むほどに経年変化で味わいが増し、自然な風合いを楽しめることは、無垢フローリングの大きな魅力。
やわらかくて温かみのある無垢フローリングで、快適な暮らしを楽しんでみませんか。