ARTICLE床と遮音性(2)

- 公開日:2018.10.9
- 更新日:2022.11.4
リノベーションに限らずマンション生活で最も気になるのは音の問題です。
今回はフローリングの遮音性能と二重床の納まりと遮音性の関係をみてみましょう。
(前回の記事の続きです)
→床と遮音性(1)
目次
床材であるフローリングの遮音等級は、2008年まではL-50のように表記されていましたが、この「推定L値」とよばれる表記が建物自体の遮音性能を示す「L値」と誤解されやすいこと、また統一された試験方法がなかったなどの理由から廃止になり、現在は(財)日本建築総合試験所「床材の床衝撃音低減性能の等級表示指針」に基いた⊿等級(デルタ等級)が新しい基準として使われています(図-1)。
この⊿等級は、あくまでフローリングだけの性能を評価しており、統一された試験方法に基づき、製品が周波数音域に応じて、スラブ素面の場合(コンクリートスラブだけの場合)と比較してどれだけ音圧を低減させるかの下限値で等級表示をしています。
低減する値が大きければそれだけ遮音性が高いと評価できます。
まず、図-1でみるように重量衝撃音⊿LHに関しては、総じて下限値がマイナス(逆に音が増幅されて大きくなるということ)になっており、二重床フローリングは重量衝撃音に対しては遮音の効果をあまり期待できない、ということが分かります。
これは<床と遮音性(1)>でみたいわゆる太鼓現象によるマイナス効果です。
逆に軽量衝撃音に対する遮音性能は効果は高いことがわかります。
一般的には以前のLL45等級に相当するのが⊿LL-4等級と解釈している場合が多いようです。
重量衝撃音に関しては、低周波域で下限値がマイナスにならない⊿LH-3がひとつの目安になると思われます。
実際の遮音性能は床材として使用するフローリング製品によって異なります。
⊿LH-2や⊿LH-3の等級の製品でも重量衝撃音に対して概ねプラスの効果が確認されている試験結果の製品もあります。
表示されている等級だけでなく実際の試験結果を確認したいところです。
ちなみに直床対応のフローリング製品は、重量衝撃音に関してはスラブ素面と同一(つまり低減量±0)と見なされていますので、遮音等級は軽量衝撃音に関する等級⊿LLだけしか表示されていません。
最後に二重床の場合は、施行上の納まりの違いによっても遮音性に大きな違いが出るという話です。
<床の遮音性(1)>でみたように、二重床の共鳴透過現象による遮音性の低下を抑えるには、中間の空気層を大きく、スラブの厚さを厚くすると効果的です。
さらにこのマイナスを抑えるには、中間の空気層が密閉されて太鼓状態にならないように壁際の端部に隙間を設けることが重要であることがわかっています。
図-2はポイント3でみたフローリングの遮音等級を評価する際の基準とされている標準型試験体の断面です(『集合住宅の音環境 – 乾式二重床のQ&A – (改定) 床衝撃音研究会』)。
具体的には太鼓現象を抑えるために、床と壁が取り合う箇所や床と幅木(はばき)が取り合う箇所に関して、図-2のように2~3ミリ以上の隙間を設けた納まりにするわけです。
少し前のマンションではこうした隙間を設けていない物件も見受けられました。
また、こうしたミリ単位の高い施工精度を実現するのは工業製品であれば簡単ですが、現場での加工をともなう建築工事の場合は、すべて均一に実現することはなかなか容易でないことも事実です。
住んでいるうちに床材の反りや壁の沈み込み、あるいは埃などで隙間が埋まってしまうことも考えられます。
二重床の遮音性を判断する場合は、スラブ厚やフローリングの遮音性能に加え、こうした施工上の納まりにも留意する必要があるということになります。
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