リノベーションで「できること」「できないこと」を一覧表で解説
- 公開日:2015.2.10
- 更新日:2023.10.20
リノベーションで思い切って内装を一新すれば、どんなことでもできる
そんな風に思っている方は多いことでしょう。
戸建でもマンションでも、いくらリノベーションといってもできることとできないことがあります。
いざリノベーションの検討をはじめてから、物件を買ってしまってから、
「希望のリノベーションができなかった!」なんてならないように、予め注意点をしっかりおさえておきましょう。
目次
リノベーションでできること、できないことの基本
マンションでも戸建でも、リノベーションのできること、できないこととして共通するのは「建物そのものの構造に関わる工事には制限がある」という点です。
これだけでは具体的にどんなことなのかわかりづらいので、戸建ての場合、マンションの場合をそれぞれみてみましょう。
戸建のリノベーションでできること、できないこと
建物自体を複数の所有者で共有しているマンションとは違い、戸建ての場合はリノベーションでの自由度は比較的高くなります。
極端な話でいえば、戸建てを建て替えるつもりであれば、大半のリノベーションは可能です。
ただ、建築基準法や地域の条例等によって、その土地にたててよい建物の大きさや建て方が定められています。
建蔽率、容積率、斜線制限といった規制が主なものですが、それらを守ることが大前提になります。そのため、バルコニーに屋根や窓をつけてお部屋にする、庭のところにあらたに部屋をつくる、といった建物の床面積が大きくなるような工事はできない場合があります。
間取りの変更などを考える際には、場合によっては間仕切り壁を壊してしまうと建物の耐震性が損なわれる恐れがあります。建物の構造によっては間仕切り壁を取り払うことができないケースや、壁を取り払っても筋交いと呼ばれる斜めに交差させた木材で建物の強度を保つ必要があるケースがあります。
また基礎とよばれる建物と地面の間にあるコンクリートの部分がどのような構造になっているか、排気口の位置がどこにあるか、といった要素によって、水回り設備の移動しやすさが変わってきます。
戸建てリノベーションでは窓や扉についてもガラっと変えてしまうことも可能ではありますが、こういった「外」に直接触れる箇所の工事では雨漏れなどがおきないように慎重な工事が必要になるため、どうしても費用がかさんできます。
リノベーションである以上、建物の構造や躯体などは老朽化した箇所の補修程度にとどめ、できるだけそのまま活かした方がよいですが、建物の構造をそのまま活かそうとすると先に述べたようなリノベーション上の制約がでてきます。
マンションのリノベーションでできること、できないこと
マンションのリノベーションでは、原則、共用部分以外は自由に設計・デザインして好みの住まいを作ることが出来ます。逆にいうと共用部分をリノベーションで壊して作り変えることはできない、というのが基本です。
リノベーションで出来ることと、出来ないことを表にまとめてみました。
これら「共用部」の壊すことができない部分と一部の例外について以下でもう少し詳しくみていきましょう。
躯体壁
マンションの共用部分で一番わかりやすいのが「躯体」です。
躯体とは、コンクリートで出来た壁、柱、梁、床スラブなどの構造部分をさします。これらコンクリートの躯体はマンション全体の建物の構造を支えています。そのため、躯体壁をこわしたり穴をあけたりといった工事は建物の強度を損なう可能性があるため、通常はおこなうことができません。
「コア抜き」と「はつり」
マンションによってはお風呂の追い炊き用の配管などのために「コア抜き」といって躯体に小さな穴をあける必要があるケースがあります。また床下に「シンダーコンクリート」といって躯体に密着するように床の高さの調整用などの目的で軽量コンクリートをうってあることがあります。リノベーション工事の際、2重床にしたり配管を設置したりする際に邪魔になるため、「はつり」といってこれらのシンダーコンクリートを除去する必要があるケースがあります。
窓や玄関ドアなどの共用部
躯体以外の共用部分とは概ね躯体が外部と接する部分です。窓の大きさや位置はもちろん、サッシュや玄関ドアなども変更は出来ません。バルコニーも共用部分なので変更することは出来ません。
窓ガラスの交換などは現状の窓枠に設置できるものであれば可能ですが、マンション全体の外観にも関わるため、色やデザインなどについては制限をうけます。
断熱性能をあげたい場合などは現状の窓枠に「カバー工法」という形で新しい窓をとりつけたり、躯体の内側に壁をたてて、既存の窓の内側にもう1枚インナーサッシという形で窓をとりつけたり、といった方法にすることが多いです。
玄関の扉については独自に交換することはできませんが、扉の内側(専有部側)については塗装したり、シートをはったりすることで好きな色やデザインにすることも可能です。
管理規約による制約
マンションは多くの方が暮らす共同住宅です。建物全体については所有者の方々による管理組合が管理規約として様々なルールを決めています。
この「管理規約」や管理規約に付随する「細則」などでリノベーション工事のためのルールが決まっています。
その内容はマンションごとに様々ですが、特に注意が必要なのは床材です。元々床がカーペット敷になっていたマンションなどではリフォームやリノベーションでのフローリングの使用が禁止されている場合があります。
そこまで厳しい制限ではなくとも、殆どのマンションでは床材の遮音性能の基準が設けられており、LL45、LL40といった一定以上の遮音性能をもった床材の使用が求められます。
この他マンションによっては水回りの移動や設備交換について制限を設けているケースもあります。
マンションではこれらのルールを守った上であれば、内装は原則、自由に間取りや内装を作ることができます。構造壁ではない間仕切り壁をすべて撤去してワンルームにするとか、天井を撤去して躯体を露出させた高い天井にするとかはすべて自由に出来ます。
マンションのリノベーションでの注意点
マンションのリノベーションでは共用部を変更するような工事ができなかったり、管理規約で工事が一部制限されていたりする、というのは前述の通りです。
そのため、リノベーションプランを考える際に間取変更や水回りの移動などが思うようにできないケースがあります。物件の内見や現地調査の段階でリノベーションのプロたちが注意してみているポイントの一部をご紹介します。
壁構造とラーメン構造
マンションの構造は大きく分けてラーメン構造と壁式構造の2種類にわかれます。
図のように主に柱と梁で建物の構造を支えているのが「ラーメン構造」で、耐力壁とよばれる壁によって建物の構造を支えているのが「壁式構造」です。
ラーメン構造の場合、躯体は概ね住戸の外周のコンクリートの部分にあたります。そのため住戸の内部の間仕切り壁などは壊しても問題がないので、間取りの自由度は高いといえます。
壁式構造のマンションでは住戸の内部に耐力壁とよばれる壊せない壁があります。特に水回り設備の周辺に耐力壁がある物件はよくみかけます。そのため間取り変更に制約があります。そんな壁式構造は5階以下程度の低層の建物に多いです。
不動産会社のつくる販売図面をみたときに、「柱型」があればほぼ「ラーメン構造」で、逆に「柱型」のない図面の際は「壁式構造」になっている可能性が高いです。
壁式構造の場合、扉などの建具についても高さのあるものは取り付けられない、扉を引き戸に変更することが難しい、という可能性もあります。耐力壁の一部に穴をあけるような恰好で扉がとりつけてあるため、既存の扉をはずしたところに設置できるような建具に制限されてしまうからです。
また、大型住戸などの場合はラーメン構造のRC造でも住戸の内部に構造壁がでてくる場合もありますのでこちらも要注意です。
パイプスペースの位置
マンションの建物では必ず背骨のように上階から下階まで配管を通している「パイプスペース」があります。上階と下階をつなぐこれらの「竪管」は共用部にあたるため、勝手に位置を動かすことはできませんし、当然ながら壊すこともできません。
また、マンションのリフォームやリノベーションで水回り設備を移動したり、お風呂やキッチン、洗面台などの大きさを変更したりする際、必ず排水はマンション全体の排水を上階から下階へつないでいる配管に接続しなければなりません。
汚水とよばれるトイレからの排水は汚水用の配管に接続しなければなりませんし、キッチンや洗面台、お風呂などからの排水は雑排水用の配管に接続しなければなりません。
そのためリノベーションを検討する際、パイプスペースの位置は非常に重要です。水回り設備を大きく移動した場合、このパイプスペースへつなぐための距離が長くなってしまうため、排水勾配をとらなければいけなくなって、床があがってしまう、段差ができてしまう、といった可能性があります。
また、パイプスペースへの距離が長くなると室内の配管から漏水する、配管がつまる、といったリスクはどうしても高くなってしまいます。
同様にパイプスペースや竪管から出てくる枝管の「向き」にも注意が必要です。通常、これらの竪管から室内に分岐した枝管の最初のつなぎ目までは「共用部」という扱いになります。
下の写真のように枝管が長いとその向きによってはプランに影響する場合があります。
ダウンスラブ
マンションによってはお風呂や洗面などの水回り設備の設置場所のコンクリートスラブがへこんでいる「ダウンスラブ」とよばれる構造になっている物件もあります。
ダウンスラブの場合、この凹んでいる範囲内にうまく配管を設置しながらお風呂や洗面台の位置やサイズを移動する分には問題ありませんが、ダウンスラブの範囲の外側まで水回り設備を移動しようとすると床が大きくあがってしまいます。
2000年ごろ以降に建てられた室内に段差のないバリアフリーのマンションでは多くみられるのがこのダウンスラブです。
天井高を保ちつつどこまでお風呂や洗面台を移動できるか、を見極めるにはプロの目で現地調査をしてもらう必要があります。
スラブ下配管
古いマンションでは配管の一部が下の階の天井裏を通っている、というケースがあります。 その場合、配管の更新をおこなうにあたって、下階の天井を一部壊して工事をおこなう必要が出てきます。
排気ルート
キッチンを中心に排気ルートがどうなっているか、も注意が必要なポイントです。キッチンの排気ダクトは下図のように梁をまたいで接続することはできません。
梁は建物の構造をささえているものなので、新たに穴をあけて通すことはできません。(既存のキッチンのダクトが梁に穴をあけて通してある場合は問題ありません)梁の下にダクトをおりまげて通すとダクトに油がたまって火災の原因となる可能性があるため、こういった接続の仕方はしません。
ラーメン構造のマンションの場合、専有部の中央付近、キッチンの近くに梁が通っているケースは非常に多いです。こういったケースでは既存のダクトの排気ルートがどこを通っているかによって、現実的にキッチンが設置できる場所が決まってきます。
柱と梁の位置
柱と梁の位置はその他、お風呂のサイズアップや位置の変更などにも影響します。ユニットバスは四角い箱のような形をしていますが、少しでもスペースを有効活用しようとして、壁の近くによせると、梁とかさなってしまうことがあります。
梁欠き加工といって梁の部分をへこませるような設置ができるユニットバスもありますが、機種が限られてきますし、浴室乾燥機などの設備がうまく設置できなくなる可能性もあります。
直天井・直床と二重天井・二重床
マンションではコンクリートスラブに直接クロスやフローリングなどの仕上げ材をはっている直天井・直床になっているケースもあれば、コンクリートスラブの下や上に天井や床をつくっている二重天井・二重床になっているケースもあります。
もともと二重床であれば、水回り設備の配管などを床下に設置しやすいため、水回り設備の移動も比較的やりやすい、ということになります。一方でもともと直床のお住まいでは、水回り設備の付近に段差があるケースが多いですが、これらの段差を解消しようとすると、二重床に作り直すことになるため、天井高が少し低くなってしまうなどのデメリットがでてきます。
逆にもともと二重床や二重天井になっているお住まいを直床や直天井に変更すると、天井高を高くできる可能性もあります。
これらはほんの一例ですが、床や天井の構造によってもリノベーションのやりやすさは変わってきます。
電気とガスの容量
最近のマンションの場合、40A以上の電気容量があり200Vが利用可能な単相3線方式の電気配線や大型の給湯器があたりまえになっており、電気や給湯の容量の面はほとんど心配はいりません。
が、築年数の古いマンションでは電気容量が30Aに制限されているケースもありますし、給湯器のサイズが20号とばれるものでガスの容量からサイズアップが難しい、というケースもあります。さらに給湯器の設置場所が決まっているために、大きさや設置方法に制限がある、というケースもあります。
電気温水器とガス温水器を変更できるマンションもあればできないマンションもあります。IHの調理器具を設置したいという希望があっても電気容量の制限から設置ができないというケースもあります。
制約があるかないか、その制約はどのくらい大きいのかは、個々のマンションや住戸で異なりますので、検討住戸にあわせて具体的にチェックする必要があります。
エアコンスリーブ
現代ではどの部屋にもエアコンを設置するのが当たり前のようになっています。そのためエアコン本体と室外機をつなぐ配管が通せるように躯体壁に小さな穴をあけてエアコンスリーブをつけてあるお部屋がほとんどです。
でも古い物件ではこういったエアコンスリーブがついていない、配管のための穴があいていない物件が沢山あります。特に共用部の廊下に面したお部屋にはエアコンスリーブがないケースは多いですし、共用部の廊下にエアコンの室外機を設置することが許されていないマンションもあります。
そういった場合、共用部側のお部屋にエアコンを設置するためには、隠ぺい配管(先行配管)という形で壁の中に配管を通してベランダにある室外機に接続する、という工事が必要になります。
天井の電気配線
もともと直天井のマンションでは天井の電気配線が躯体の中を通っている場合があります。
この場合、直天井のままでリノベーションすると照明の位置を自由に変更することができません。
もちろん電気配線の取り出し位置から配管したり、照明用ダクトレールと取り付けたりするといった対応は可能ですが、電気配線の取り出し位置が決まってくる、という点は変わりありません。
まとめ
ここではほんの一部ですが、リノベーションでできること、できないことやそれらを見極めるための注意点をあげてみました。
リノベーションの現地調査ではご希望のリノベーション内容をうけてこれらのポイントをしっかり見極める力が非常に重要です。
中古を買ってリノベーションを検討している方は物件探しの段階でこういったポイントを見極めてから物件購入の決断をしましょう。
いずれにしてもご要望に応じて物件の特徴を見極める力があるリノベーション会社をパートナーに選ぶことが成功の秘訣です。もちろん私たちリノままはこういった現地調査力に自信をもっていますので、是非ご相談ください。