築50年のマンションは何年住める?メリットとデメリットを詳しく解説

- 公開日:2019.12.19
- 更新日:2024.1.12
築10年、築20年・・・築50年。どれも同じ「中古マンション」。どこまで古いものまで許容しますか?
「築50年のマンション」と聞いてどのようなイメージを持たれるでしょうか。
「いつまで住めるの。」「老朽化や耐震は大丈夫。」「築50年のマンションは売れるの。」といった疑問や不安を感じられる方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、「築50年のマンション」にスポットを当て、マンションの寿命や築古の中古マンションを購入するメリット・デメリットを徹底的に解説します。
築50年の中古マンションはいつまで住める?
リフォームやリノベーションへの関心が高まる中、中古マンションの購入を検討されるお客様は増加傾向にあります。
そんなお客様の多くが真っ先に解消したい疑問が「中古マンションはいつまで住めるのか」という、マンションの寿命です。
マンションの寿命については、国土交通省の研究結果に伴う資料や、建て替えが行われた実例、さらには税法上の法的耐用年数など、様々な情報が開示されています。
この章では、それらの情報を基に様々な角度からマンションの寿命について解説します。
平均的な寿命は40年前後?
東京都から公表された「建て替えが行われた実例」によると、マンションの寿命は全国平均で33.4年、東京都のマンションで40.0年となっています。
また、東京都で行われたマンションの建て替え実例を紐解いた結果、築36~築50年のマンションがそのうちの約75%を占めている事が分かりました。
これらの数字だけを見ると、築50年のマンションは住むことが困難な老朽化したマンションのように感じてしまいますよね。
でも注意してほしいのはあくまでこれらは「建て替えが行われた実例」の平均であるということ。日本全国で10万棟を超えるといわれるマンションの中で実際に建て替えがおこなわれたのは累計でも300棟にも満たない数です。(2022年国交省調査に基づく)
従って、実際には築40年や50年を超えるマンションに暮らす方も数多くいらっしゃいます。
では、税法上ではマンションの寿命をどのように捉えているのでしょうか。
マンションには税法上の資産価値があります。
固定資産税、不動産取得税、登録免許税など各種の税金を計算するための基準となる元となる数字で、「固定資産評価額」とよばれ、新築時から築年数を経るごとに少しずつ減っていき最終的にはほぼゼロに近くなります。
要は新しい建物は価値が高いとみなされて税金も高くなる、という仕組みです。
この資産価値が減り続ける期間を「法定耐用年数」と呼びます。
殆どのマンションが該当する「鉄筋コンクリートでつくられた住宅」に定められた法定耐用年数は47年と定められています。
つまり、築47年を超えるマンションは、健全な状態を維持できていたとしても、税法上では資産価値の無いものと判断されるのです。
ただこの「法定耐用年数」はあくまで建物の実際の使用年数を踏まえて適宜改正されていくもの。そもそも日本では建物全体の平均寿命は30年程度といわれています。古くなった建物は壊して建て直すことが多かったことを踏まえて設定された耐用年数です。
SDGsがさけばれる昨今ではストック型社会を目指して建物をメンテナンスしながら長く活用するように考え方も変わってきています。「法定耐用年数」はこのような社会的な背景から資産の活用法が変化すれば変更されることもありうるものです。「これまでの日本社会がどんな風に建物を活用してきたか」を反映したものにすぎないので決して建物の物理的な寿命から設定されたものではありません。
では、マンションの物理的な寿命は何年なのでしょうか。
次項では、この疑問について解説していきます。
中には100年以上保っているマンションも
国土交通省の資料によると、鉄筋コンクリート構造の建物の物理的寿命は約117年と推定されています。
日本では築100年のマンションと言われてもピンときませんよね。
ところが、世界に目を向けるとイギリス・ロンドンやフランス・パリなどには、築100年を超える集合住宅が数多く存在します。
また、アメリカ・ニューヨークにある世界的に有名な「エンパイア・ステートビル」も、後数年で築100年に到達します。
こうした築100年を超える建物に共通するのが、適切なメンテナンスと修繕を行っているという点です。
築50年のマンションに限らず、築20年〜築30年の中古マンションであっても、適切なメンテナンスと修繕が行われていなければ、建物の寿命は縮んでしまいます。
中古マンションの購入を検討する際は、築年数の確認とともに、メンテナンスや修繕が正しく行われている物件かどうかをしっかりと見極めましょう。
築50年の中古マンションを選ぶメリットは?

日本では、新築マンションや築浅の中古マンションが人気です。
そんな中で、わざわざ「築50年の中古マンション」を購入する意味はあるのでしょうか。
この章では、築50年の中古マンションのメリットを3つご紹介します。
価格が安く大幅な下落が少ない
まず初めに紹介するメリットは、なんといっても「価格が安い」というポイントです。
新築マンションや築浅の中古マンションは人気が高く、中古マンションであっても簡単には値崩れしません。
公益財団法人東日本不動産流通機構の発表によると、築年数が31年を超える中古マンションは、新築価格の3分の1程度の価格にまで値下がりしています。
つまり、新築当時の販売価格6,000万円のマンションが、築年数31年目以降になると1,800万円程度まで値下がりするのです。
また、この発表では「築年数31年〜」と、築年数が30年を超えるマンションの平均価格を示しているため、築50年の中古マンションの価格は更に安くなっていると考えられます。
前章ですでに解説していますが、築50年のマンションは基本的に税法上では建物の価値はほぼなく土地の評価のみになっています。販売価格は底値と言っても過言ではないでしょう。
従って、理屈の上では築50年のマンションは購入価格とその後の売却価格に大差がでることはないのです。
立地が良い物件が多い
続いて紹介するメリットは、「立地が良い物件が多い」というポイントです。
日本の分譲マンションは、1960〜1970年代にかけて普及が進み、その後の建設ラッシュによって大きく発展してきました。当然良い場所に先にマンションが建ってしまうと、後から建てられる新築マンションはどうしても駅から遠くなったり、ターミナル駅からは離れてしまったり、と立地では不利になってしまいます。駅前で大規模な再開発が行われた一部のエリアを除くと築年数の古いマンションの方が立地がよいことが多く、都心部などではその傾向が強いです。
従って築50年のマンションは好条件な土地に建設されていることが多いのです。
マンションの購入を検討する際は、新築マンションや築浅の中古マンションだけではなく、築50年のマンションにも目を向けてみてください。
リノベーション・リフォームにお金をかけやすい
最後に紹介するメリットは、「リノベーション・リフォームにお金をかけやすい」というポイントです。
すでに紹介しているとおり、築50年のマンションは新築マンションに比べ立地条件の良いものが多く、購入価格は新築マンションの3分の1程度まで安くなっています。
そのため、新築マンションの相場が6,000万円のエリアであれば、それよりも立地条件の良い築50年のマンションが1,800万円程度で購入できます。
築50年のマンションをフルリノベーションする場合の相場はよくある50~70㎡程度のマンションの場合、1000万円~1500万円ほどです。ですが、築年数が古い分、床や壁の下地などをすべて作り直す必要がでてきたり、有害物質のアスベストが見つかるケースがあったりとリノベーション費用自体は多くかかる傾向にはあります。
ただ、そもそも物件が安い築50年のマンションであればフルリノベーションを含めても新築相場より1000万円以上安く購入できる可能性があります。
マンション購入価格を抑えたい方や、ライフスタイルに重点を置かれている方は、自由な空間へとリノベーション・リフォーム可能な築50年のマンションもおすすめですよ。
築50年の旧耐震のマンションを選ぶデメリット

中古マンションの購入を検討する場合、築年数や価格と共に気になるのが「耐震性」ではないでしょうか。築50年のマンションは、旧耐震のマンションに該当するため、いくつかのデメリットがあります。この章では、その中でも見落としがちなお金にまつわるデメリットを中心にご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
売却したくても売れない
次章で詳しくふれていますが、築50年のマンションは「旧耐震」に該当するマンションでそのほとんどが耐震改修や耐震補強ができていません。
そのため、いざ売却しようとしたときに、耐震性への懸念からなかなか買う人が見つからない、ということが起こりやすいです。
また、いざ「買いたい!」という方があらわれたときにも「旧耐震」であるがゆえに担保評価が低くなってしまい、住宅ローンの審査では厳しくみられがちです。
希望した金額満額でのローンが組めない、金利が高くなってしまう、といった影響がでてきます。そのため資金調達がネックになって「売りたくても売れない」「買いたくても買えない」ということが起こり得ます。
先に述べたように築50年のマンションには「安い」という魅力がある一方で「売りやすさ」「買いやすさ」には注意が必要です。
修繕積立金が高い
マンションの建物全体の修繕費は当然ながら築年数が古くなると多くの費用がかかってくるようになります。建物全体の配管の更新や玄関扉や窓の交換、エレベータ―などの大きな設備の更新といった多大な費用がかかる工事は築40年前後に予定していることが多いものです。
マンションでは、各お部屋の所有者の方々が皆で積立貯金をしていって、そこから建物全体の大きな修理をおこなっていく、という修繕積立金というものがあり、その中からこういった建物全体の修繕費を賄っています。築年数の古いマンションでこのような大きな工事に対応する充分な修繕積立金がない場合、基本的には修繕積立金を値上げするか、これらの工事をあきらめるか、のどちらかになります。
築年数の古いマンションをみていると、修繕積立金だけで毎月4万円を超えるような高額の支払いが必要になる物件があったり、修繕積立金は安いかわりに現地にいくと老朽化がひどい物件があったりするのはそのためです。
中古マンションの購入を検討する際は、管理費や修繕費についてもしっかりと確認しておくと安心です。
税金の優遇措置がうけられない
築50年の旧耐震に該当するマンションでは、住宅ローン減税、贈与税の非課税制度や、不動産取得税、登録免許税といった各種税金の優遇措置を利用できない可能性があります。
もちろん、旧耐震の建物でも耐震補強工事などで、新耐震同様の耐震性が認められればこれらの優遇措置がうけられることもありますが、レアケースです。
購入する際には特に住宅ローン減税を前提にして予算を建てている方も多いと思います。築年数が古い物件の購入を検討する際には特に注意が必要です。
「住宅ローンの審査が厳しく金利が高くなってしまった」
「税金の優遇や住宅ローン控除などが使えないから、物件を購入する諸費用が高くついてしまった」
などのような失敗をしないためにも、不透明な地震という自然災害ばかりに目を向けるのではなく、購入後にかかる現実的な数字もしっかりと確認しましょう。
築50年の中古マンションは耐震性に注意
築50年のマンションは「旧耐震」に該当するマンションです。そして、東京都が2021年5月に実施した「マンション実態調査結果」によれば、94.1%の旧耐震マンションが耐震改修や耐震補強を行っていません。
では、旧耐震と新耐震にはどのような違いがあるのでしょうか。
新耐震基準は、1981年6月に定められた基準になり、それ以前の耐震基準を旧耐震基準と言います。
旧耐震基準では「震度5強の地震が起きた場合でも建物が倒壊しない」という基準でしたが、新耐震基準では「震度6以上の大規模地震が起きた場合でも建物が倒壊しない」という基準に改定されています。
では、旧耐震と新耐震で実際の被害はどの程度変わるのでしょうか。

上の表は、今からおよそ30年前に発生した1995年「阪神・淡路大震災」の建物の被害状況を、築年数別に並べたものです。
左から右へ行くほど築年数の新しい物件になります。
そして、ピンク色の部分が「甚大な被害が発生した建物の割合」を表し、緑色の部分が「大きな被害を受けなかった建物の割合」を表しています。
上の表の一番右側が「新耐震基準」になって以降に建てられた物件です。
皆様は、この表を見てどのような印象を受けるでしょうか。
次項では、この表についてさらに掘り下げていきます。
中古マンションの購入では年代を考慮して選ぶ
上の表を見て頂いたリノままのお客様の感想は、以下のようにわかれます。
「絶対新耐震。と思っていたけど、真ん中のところ(1972~1981年)も悪くないかも。」
→緑色の部分に注目し、被害が軽微だった建物の割合に大きな差が無いのであれば、旧耐震基準の建物でも良いのではないかという感想です。
「旧耐震はとんでもない。絶対新耐震がいい。」
→ピンク色の部分に注目し、被害が甚大だった建物の割合が3〜10倍も違うのだから、新耐震基準の建物が好ましいという感想です。
これらの感想からわかることは、耐震基準のとらえ方も人それぞれだという事です。
そして、それぞれの感想が正しいとも言えます。
ちなみに、上の表と類似した2011年「東日本大震災」での建物の被害状況を表したものがこちらです。

出典:<マンションの新耐震基準と旧耐震基準とは>中古マンション(団地)のアレコレ
この表をザックリと読み解くと、耐震基準の違いによって被害の大きさが極端に変わることはないという印象をうけます。
実際のところ、直下型の地震で、「地震の揺れ」で建物に大きな被害があった地震自体がそれほどたくさんは発生していない、ということです。
もちろん、自然災害が相手なので「絶対」はありません。
震度6の揺れに耐えることを想定した「新耐震」の物件でも
震度7の地域もあった「阪神・淡路大震災」では1.7%の建物が甚大な被害をうけているのも事実です。
まずは先ほどの表をみた素直な感想をもとに、「どのくらい古い物件までアリか」をみなさんそれぞれ考えてみてくださいね。
「地震に弱い形の建物」かどうかを確認しておく
前項で紹介しているとおり、耐震基準だけでは被害の大きさは測れません。
一方で、「地震に弱い形の建物」というのは確かに存在します。
それがこちらの図です。

地震に弱い形の建物として真っ先に挙げられるのが、1階部分が駐車場になっている「ピロティ」です。ただ、これらをあまり神経質に気にしていると買える物件がなくなってしまいます。
店舗が入っているマンションもたくさんありますし、多くの建物は近隣の建物の日当たりが悪くなりすぎないように、「斜線制限」とよばれる規制をうけます。そのため、「セットバック」と呼ばれる階段状になった箇所がある建物が殆どです。
要はいびつな形をしていると、地震の揺れがあったときに変なところに力がかかって壊れやすい、ということなので「なるべくきれいな直方体の建物」を選ぶのが理想、ということくらいを頭にいれておきましょう。
築50年の中古マンションを選ぶ際のポイント
中古マンションの購入を検討する際に「絶対にやってくべき事」をご存じでしょうか。
この章では、築50年の中古マンションを選ぶ際に絶対にやっておくべきポイントを2つご紹介します。
管理状況を確認しておく
最も重要なポイントは、「管理状況を確認しておく」という点です。
本記事でもすでに紹介していますが、築古の中古マンションにおいて最も重要なポイントは、適切な修繕やメンテナンスが行われているかどうかです。
長期修繕計画の有無や、建て替えについての議論の有無を必ず確認しましょう。
また、これまでに行われた修繕履歴や、修繕積立金の推移なども確認することをおすすめします。
築年数が古いマンションでは当初の所有者の方から次世代へ相続が発生してることも多く、現在の所有者の方がお部屋を空き家にして放置していると管理の状況が悪くなりやすいです。その結果、修繕積立金のが滞っている場合などは特に要注意です。
不動産会社や管理会社などに相談すれば開示してもらえることが多い情報ですので、購入後のリスクを回避するためにも絶対にやっておくべきポイントです。ですよ。
長期修繕計画については、以下の記事で詳しく解説しています。
「マンション管理」のチェックポイント<実践編②>管理費・修繕積立金が「安すぎる」のは危ない! – リノまま(東京テアトル)
配管などの建築構造を調べる
次にポイントになるのは「配管などの建築構造を調べる」という点です。
すでに紹介しているとおり、鉄筋コンクリート構造の建物の物理的寿命は約117年と推定されています。しかし、排水管をはじめとする各種配管の寿命は30年程と言われています。
そのため、各種配管のメンテナンスを実施しやすい環境かどうかが大きなポイントになります。
1970年代近辺で建てられたマンションでは、排水管や電気配線がコンクリートスラブに埋設されていたり、スラブを貫通させて階下の天井裏を通している場合があります。
階下に影響のある経路で配管が通されている場合、自由にメンテナンスができないばかりか、せっかく購入したマンションなのに不自由をこうむることになりかねません。
その他、リノベーションをおこなう際に希望のリノベーションができるかどうかに影響するキッチンなどの排気ルートなどもチェックは必須です。
大規模なリノベーションを前提に築古のマンションを選ぶ以上、買ってからこんなはずではなかった、とならないように、建築の知識が豊富な方と一緒にチェックしておくようにしましょう。
築50年のマンションをリノベーションするならリノままへ
せっかく希望に合った物件を購入しても、リノベーション・リフォームで失敗しては意味がありませんよね。
リノままでは、豊富な経験と実績を基に、物件探しから設計・施工までを「オールワンストップサービス」として、お客様へご提供しています。
サービスの品質を保つために少数精鋭のチームを組んでアフターサービスまで対応していますので、是非お気軽にご相談くださいね。
まとめ
適切なメンテナンスを行っていれば、築50年のマンションでも安心して長期的に暮らせる事がお分かりいただけたのではないでしょうか。
築50年のマンションは、購入後のリノベーション次第では、新築マンションよりも快適な住空間を作り上げることが可能です。
築年数や耐震性だけにとらわれず、ぜひライフスタイルにも意識を向け、最適な物件をお選びください。
〇「マンション管理」のチェックポイント<基礎編>中古マンションを蝕む「最大の敵」とは?
〇中古マンションを蝕む「最大の敵」とは?「マンションの管理」のチェックポイント<実践編①>