「マンション管理」のチェックポイント 中古マンションを蝕む「最大の敵」とは?

「中古マンションは管理を買え!」っていわれますが、「管理」って何をチェックするかわからない!

不動産会社が契約直前にいろんな資料をくれるけどいろんなことが書いてあって何をみていいかわからない!

実はコレ、私自身がマンションを買おうとして不動産会社の説明をうけたときの感想です。

「危険な動物を飼ってはいけない」とか「楽器の演奏は周囲に配慮してくださいね」とか「駐輪場は何台まで使っていいですよ」とか
今までの自分たちの生活に身近なことには目がいきます。

でもマンションの管理で本当に重要なのは身近なことばかりではありません。
なにをどんな風にチェックすればよいのかまとめてみました。

高原太郎

[著者]

高原太郎

宅地建物取引士。映画館勤務を経てリノベーションへ。リノままの一員として多くのお客様の住まいづくりに関わる。現リノまま広報。

中古マンションは管理を買え!

中古マンションを購入するとき、よく「管理を買え」と言われます。でも「マンションの管理」とはそもそもどんなことなのか、何をチェックすればよいのかわからない、という方が殆どではないでしょうか?

「管理」と一口に言っても大きく2つに分けて考えることができます。

「日常的で身近なこと」と「あまり身近ではないけれど中長期的には重要なこと」です。

・日常的な管理
日々の清掃、設備・備品などの発注・交換
毎年の設備点検、これらに付随する事務作業
駐車場や駐輪場の使用者の管理
管理に必要なお金の徴収、入出金

・中長期的な管理
マンション内のルールを決める/変える
建物全体の維持・修繕

日常的な管理は主に現地をみにいったときに共用部をみてまわるとチェックすることができます。

一方で中長期的な管理については現地をみるだけではなかなかわかりません。マンションの管理に関する様々な書類をチェックしながらその状態をみていく必要があります。

とはいえ、マンションの管理に関する書類は沢山あります。わかりづらい部分も沢山あるのでスルーしてしまう方も多いのですが、絶対に購入前に確認しておく必要があるものです。

では何故「中長期的な管理の状態」を見ておくことが重要なのでしょうか?

※中古マンション購入時、物件調査全般の注意点はコチラで網羅しています!

⇒リノまま【知る・調べる】中古マンションの物件選びの極意 物件調査や内見のポイントと注意点

マンション管理では特に「長期修繕計画」と「修繕履歴」に注意!

中古マンションを蝕む最大の「敵」とは?

多くのマンションが鉄筋コンクリートでつくられていますが、この鉄筋コンクリートには厄介な「敵」がいます。それは「水」です。

水によって中の鉄筋が錆びてしまうと強度が損なわれますし、錆びて膨張することで周囲のコンクリートを壊してしまいます。

長く暮らすためにこの修繕工事をしっかりおこなうことで「敵」から守ってあげる必要があるのです。

「最大の敵」である水はどこからくる?

その「水」はどこからくるでしょう?

おそらく多くの方は「雨」「湿気」といった「外からくる水」のことをまず考えるかと思いますが、これだけでは足りません。

実はもう一つあります。

マンションはどの住戸にもキッチンやお風呂、トイレがついています。

そんなキッチンやお風呂、トイレなんかに水を供給して、そこから出る水を下水に送り込むために給水管や排水管が建物の中をめぐっています。

各お部屋の中のパイプスペースとよばれるところを通って、背骨のように上の階から下の階まで給排水管の中を水が流れています。

そんな給排水管が老朽化すると、マンション内で漏水事故も沢山発生しますし、建物の強度にも影響をあたえてしまいます。これが「内からくる水」です。

こういった「外からくる水」と「内からくる水」に対してしっかり守りを固められているか、が長期修繕計画や修繕履歴といった書類をみていかないとなかなかわかりません。

あまり身近ではないのでスルーしてしまう方が多いかもしれませんが、中古マンションの購入を考える上では必須の視点です。

このような重要ポイントを見逃さないよう、マンションの管理状態をチェックする方法を以下でお話します。

※長期修繕計画のチェック方法の詳細はこちらから

⇒リノまま【知る・調べる】 マンションの長期修繕計画とは?中古マンション購入時の注意点を紹介

マンション管理のしくみ

マンションの管理状態をチェックするには、その仕組みを知っておかなければなりません。「管理組合」や「管理会社」といった言葉を知っていても、それぞれの役割をきちんと理解できている方は意外と少ないものです。

そもそもマンション管理の仕組みがどうなっているのか、を改めて確認しておきましょう。

マンションの管理組合とは?

賃貸アパートでは建物の維持修繕やロビーや階段の清掃などは全て所有者であるオーナーがお金を出して手配してすすめてくれます。

建物を維持管理する責任が「所有者」にある、というのはマンションも同じです。

ただ、マンションの場合は各住戸の所有者全員で土地や建物を所有している、という形になります。

そのため、マンションの区分所有者全員で「管理組合」という組織をつくって、その「管理組合」がマンション全体に関わる建物全体の維持修繕や管理をすすめる、という形をとります。

従って、マンションを管理する主体は第一義的にはあくまで各住戸の「所有者」です。つまりあなた自身もその物件を購入すればマンション管理をおこなう当事者になる、ということなのです。

管理組合の「総会」と「理事会」

とはいっても、マンションの各住戸全員が常に日々の細かなことの決定に参加する、というのはなかなか現実的ではありません。

マンション全体、すなわち所有者全員に関わることで重要な内容については、区分所有者全員でその内容を議論する「総会」を開催して決めていきます。通常はこの「総会」は年1回の開催です。

また管理組合の中で代表者となる「理事長」や「理事」などの役員を決めて、月に1回や隔月に1回などで開催される「理事会」の中で細かなことを決めてすすめていきます。

マンションの「管理規約」とは?

こういった管理組合の運営に関わる基本的なルールを定めたものが「管理規約」です。

但し、「どんな規約でもよい」というわけではなく、国交省が作成した「マンション標準管理規約」を指針として作成されたものが殆どです。

また、「区分所有法」という複数の所有者がいる建物の区分所有者の権利や財産を守るための法律がこの「標準管理規約」の根拠になっています。

管理規約の中にはマンションの建物のどこが共用部とされているか、や管理組合をどのように運営していくか、管理組合はどんなことをするか、マンションの維持管理に関わる管理等にかかわるお金をどんなふうに管理するか、といった基本的な内容が定められていますし、先に述べた総会や理事会の運営方法なども記載されています。

マンションの「管理会社」とは?

「管理組合」としてマンションの各住戸の区分所有者が自分たちで管理業務をおこなっている、というのがいわゆる「自主管理」です。

古いマンションなどで自主管理のマンションもありますが、建物の維持・管理となると専門的な知識が必要な場面も多く、区分所有者が自分たちだけで進めていくというのは現実的には困難です。

そんなときに、「管理組合」から管理業務を委託された上で動いてくれるのが「管理会社」です。多くのマンションでは管理組合の総会決議を経て選ばれた管理会社が管理業務の実務を担っています。

1点注意が必要なのは「管理の主体はどこか」という点。

管理の実務について詳しいのは「管理会社」ではあるものの、管理の主体はあくまでマンションの区分所有者である「管理組合」です。お金が必要なことがあれば、そういった費用を負担するのも全て「管理組合」です。

管理会社だからといって、管理組合に無断で作業を進めたり、費用をかけて設備を修理したり、といったことはできないのです。

管理費と修繕積立金

当然ですがマンションの日常的な管理にも、中長期での建物の維持修繕の工事にもお金がかかります。マンションを維持していくためのコストなので、当然ながら区分所有者が負担することになります。それらの代表的なものが「管理費」と「修繕積立金」です。

管理費は日々の清掃や消耗品の交換や補充の費用、管理人さんの人件費、管理組合の運営に関わる費用などです。

修繕積立金は建物の維持管理のために計画的に実施する修繕工事や設備交換工事などの費用を積み立てておくものです。

いずれも区分所有者から毎月いくら、といった形で徴収して、その中から管理組合が必要に応じて使用していきます。

こういったお金の管理も管理組合の管理業務のひとつで、それらについても管理会社に委託している、というケースが殆どです。

マンションの管理状態を判断する2つの方法

マンションの管理状態をチェックするには以下の2つの方法があります。

・書類でチェックする

  管理規約・使用細則
  長期修繕計画
  重要事項調査報告書・修繕履歴
  決算書
  総会議事録・理事会議事録

・現地でチェックする

  マンションの掲示板
  ロビーや通路の清掃状況
  集合郵便受けの状況
  自転車置場やゴミ置場の状況
  建物の躯体の状況
  管理会社担当、管理人へのヒアリング

ここまでみてきたようにひと言で「マンションの管理状態」といっても様々な要素が含まれています。書面だけでみていてもなかなか実態はわかりませんし、現地をいくらつぶさにみても現地に出向いた時の状況しかわかりません。

書面のチェックと現地でのチェックを組み合わせて管理の実態を推測する、というさながらデューデリジェンスのような姿勢が必要です。

マンションの管理状態がわかる書類

マンションの管理の状態を判断するためにみておきたい主な書類とチェックポイントをあげていきましょう。

管理規約・使用細則

マンションの管理組合のルールです。ただ前述の通り、大半の箇所は「標準管理規約」の通りなのでどのマンションでも大差ありません。

そのため見過ごしがちなのですが、以下の項目などはしっかりチェックしておきましょう。

・共用部の持ち分比率
・議決権の比率
・承認事項

殆どのマンションでは、所有している住戸の専有部の広さに応じて共用部の持ち分や管理費・修繕積立金の金額が決まっています。また議決権につても1所有者に対して1票というのが通常です。

ですがマンションによっては特定住戸の所有者が議決権を沢山もっている、といったケースがあります。同様に「承認事項」として特定住戸に対しては特別に何かを許可している、とか地域の行事などに協力する義務がある、といった項目が定められているケースもあります。

これらはマンションが建てられた際に元々の地主だった方や地域社会への配慮などから定められた特殊なルールである可能性が高いもので、決して全てが悪いというわけではありません。

但し、あまりに極端な議決権の偏りなどがあると、管理組合内での大きな決議に特定の方の意向が強く反映されすぎる、特定の方の承認がないと重要なことは何も進まない、といったリスクになります。

管理規約に対して使用細則というのはもっと細かな部分のルールを定めたものです。犬や猫といったペットを飼ってよいかどうか、駐車場や駐輪場を利用する人のルールはどうなっているか、リフォームやリノベーション工事を行う際のルールはどうなっているか、などマンションごとに様々な細則が定められています。

こういった細則をしっかりつくっているかどうか、でも管理組合の「姿勢」はみてとれます。自分たちが利用しない・該当しないルールであっても目を通しておくことをお薦めします。

長期修繕計画

この先30年程度以上の期間にわたってマンションの維持管理のためにどのような修繕工事をおこなうか、それにいくらのお金がかかるか、修繕積立金は足りるか、などをまとめた書類です。

前述した通り、マンションの最大の敵は「水」。水には雨や湿気といった「外側からくる水」と給排水管のように「内側からくる水」があります。

「外側からくる水」に対して守りを固めるためには、12年程度に一度計画してある外壁塗装や屋上防水といった工事「内側からくる水」に対して守りを固めるためには築30年前後で寿命をむかえる給排水管の更新工事がそれぞれ重要です。

建物を長持ちさせるための守りがしっかりできているかどうかは、まずこの「長期修繕計画」をみることから確認していきます。

重要な工事について
・計画がきちんとなされているか
・実際に工事を実施するだけの資金の裏付けはあるか=修繕積立金は足りているか
をみておきましょう。

もし修繕積立金が不足する計画になっているのであれば、どのくらい不足しそうか、をみることで、今後修繕積立金の値上げをどの程度まで覚悟しておけばよいか、が予想できます。

非常に重要な書類なのですが、その他の資料とあわせて実態をみていくと「計画そのものが形骸化している」というケースもよくあります。

・5年に1度以上のペースで見直しをしているか
・決算書や修繕履歴などと見比べて大きな矛盾点はないか(計画した工事を理由なく先送りしていないか)

といったポイントまで見ておく必要があります。

稀に「長期修繕計画を作成していない」というマンションや、「作成しているが購入検討者には見せていない」というマンションもありますが、これらはそもそも購入を見送った方がよいでしょう。

※長期修繕計画のチェック方法の詳細はこちらから⇒リノまま【知る・調べる】 マンションの長期修繕計画とは?中古マンション購入時の注意点を紹介

管理組合の決算書

マンションの管理組合は区分所有者から管理費や修繕積立金を徴収しています。

なので毎年それらをどのように使用したか、今どのくらい残っているかを決算書としてまとめて報告し、区分所有者の承認を得る必要があります。

この決算書にはマンション管理の状態の様々な課題が隠されています。

そもそも計画通りに管理費や修繕積立金が徴収できているかどうか、計画通りに使用しているか、多額の予算外の出費はないか、繰越残高が減っていく傾向にあるのか増えていく傾向にあるのか、など。

先ほどの長期修繕計画と見比べてみるだけでも、「計画上の修繕積立金残高と決算書の修繕積立金残高が大きくずれている」といったケースはよくあります。

こういった疑問点を別の書類をみたり管理会社へヒアリングしたりすると管理の実態が見えてきます。

3年分程度の決算書をみておくことをお薦めします。

総会議事録・理事会議事録

こちらも決算書同様、毎年の管理組合の総会や各月の理事会でどんなことが議論されているか、区分所有者からどんな意見がでているか、などがわかります。

大きな住民トラブルを抱えているマンションなどであれば議事録に記載されていることもありますし、漏水事故などが多発するマンションではそういった対策が議論されているケースもあります。

決算書とあわせてみておくと、例えば多額の予算外の出費の理由が推測できたり、管理費や修繕積立金の徴収が滞っている事情が推測できたり、と多面的に今の管理組合の状況を理解することができます。

重要事項調査報告書

マンションの管理組合が管理会社に管理業務を委託している場合、管理会社が「重要事項調査報告書」という書類を作成してくれます。

この書類をみることで、管理規約や使用細則の重要な項目や決算書の主要な項目がまとまっているので概要をつかむことができます。

この重要事項調査報告書をまず眺めながら、疑問に感じた点を管理規約や議事録などで追っかけていく、といった形でインデックスとして使うと便利です。

マンションの管理状態を現地でチェックするポイント

次に内見などで現地にいったときにみておきたいポイントをあげておきます。

マンションの掲示板

マンションにはロビー付近などに必ず「掲示板」があります。この掲示板には管理組合からの連絡事項や注意事項、地域の町内会などからの連絡事項、などが掲出されています。

こういった掲示物がキレイに貼られているかどうか、住民間のトラブルや設備のトラブルを予想させるような掲示物があるかどうか、などをみておきましょう。

ロビーや通路の清掃状況

掲示板だけでなく清掃の状態も重要です。共用部にゴミがちらかっていて掃除が行き届いていない、といったマンションであれば、住民の方や管理の状態に何かしら問題を抱えていることが予想されます。

集合郵便受けの状況

集合郵便受けでは、ポストから郵便物があふれている部屋が沢山あるかどうか、をみておくとよいでしょう。

ポストから郵便物があふれているお部屋が沢山あるマンションは、「今は誰も住んでいない部屋」が沢山あるのでは、という予想がたてられます。

相続や転勤、投資用での所有など、区分所有者自身がそのマンションに住んでいない、というケースは多々ありますが、そういった「住んでいない」所有者はどうしてもマンションの管理状態への関心が薄くなりがちです。

そうすると一部のリゾートマンション等で言われているように管理組合が十分に機能しない、重要な議案が決定できず進められない、といった問題がでてきます。

自転車置場やゴミ置場の状況

自転車置場、駐車場、ゴミ置き場など、共用部であり住民の方々がルールを守って使用するところをみるとマンションの日常がよくわかります。

ルールがしっかり決められていないマンションもあれば、ルールはあっても誰も守っていないマンションもあります。もちろんルールは最低限ですが住民の方がしっかりモラルを守って運用できているというマンションもあります。

自転車はキレイに並べておいてあるか、ゴミはしっかり分別して出されているか、など細かいことですがしっかりみておきましょう。

建物の躯体の状況

建物のコンクリートの躯体もざっと見ておくことをお薦めします。コンクリートは年数が経つとクラックというひび割れが入ることがあります。

ヘアクラックとよばれるような細くて浅いひび割れであればあまり心配いりませんが、深くて太いひび割れが沢山あるようであれば、長期修繕計画がしっかり機能しているかどうか不安が残ります。

万が一鉄筋が露出しているような状況であれば、先に述べたような「水」に対する守りが十分でない、ということになります。

タイル貼りの外装のマンションなどでタイルが剥がれている箇所が沢山あるようであれば防水面だけでなくタイルの落下による事故なども心配になります。

長期修繕計画や修繕履歴と見比べてみて、しっかりメンテナンスされていそうな建物なのかどうかを見ておきましょう。

管理人さんへのヒアリング

マンションの管理の状態を浴しているのは管理人さんです。話ができる機会があれば、書類をみたり現地をみたりした際に気になったポイントについて率直に管理人さんに質問してみるのもよいでしょう。

もちろん修繕工事のことなど専門的なことは管理人さんだけではわからないケースもありますが、それらも不動産会社を通して管理会社や管理組合に問い合わせてみましょう。

必ずしも疑問が解決するとは限りませんが、そういった質問に対して真摯に応えようとしてくれたかどうか、だけでも管理の状態を知るヒントになります。

まとめ

マンションの管理状態をチェックするポイントをここまでみてきました。

内見の際など現地で見ておくべきポイントについてはよく理解している方も多いことでしょう。

でも、中古マンションを購入して実際にそこに長く住まうためにはそれだけでは不十分です。

長く住まう以上、当然建物も老朽化していきます。長期修繕計画などでしっかり未来にむけての対策がとれているかどうか、それを担っていけるだけの管理組合の状態か、を見極める必要があります。

もちろん未来のことなので全てを明らかにすることは不可能ですが、致命的なリスクがないかどうかは書類のチェックと現地のチェックを組み合わせれば推測できるものです。

なかなか自分たちだけで調査するのは難しいところなので、不動産会社など信頼できるパートナーのサポートをうけながら進めることをおススメします。

最後に一番重要なことを改めて。

そのマンションを購入した瞬間からあなた自身も管理組合の一員として責をおうことになります。

この先のマンションの価値を高めるような管理ができるかどうかは自分たち自身の意識にも大きくかかってきている、ということだけは忘れないようにしましょう。

※中古マンション購入時、物件調査全般の注意点はコチラで網羅しています! ⇒リノまま【知る・調べる】中古マンションの物件選びの極意 物件調査や内見のポイントと注意点