快適に暮らす工夫 ~シックハウスを防ぐための空気質を考える~

昔の住宅は寒い。

私も実家の一戸建てのトイレが冬場寒くてまるで外気温!

ガタガタ震えてたこともあります。

近年、省エネが国の政策として大分進んできました。

「低炭素住宅」「ゼロエネルギーハウス」「長期優良住宅」など、どんどん気密性がアップし、断熱性も高くなっています。

しかし、その反面増えているのが「ぜんそく」「アトピー」「アレルギー性鼻炎」などのアレルギーです。

高気密化により隙間が少なくなった近年は、汚れた空気がこもりやすく、
換気の大切さや、シックハウスの対策などが必要といわれています。

気密性が高い=寒くない、といっても実はいいことばかりではないのです。

佐藤和裕

[著者]

佐藤和裕

一級建築士。宅地建物取引士。インテリアコーディネーター。不動産のこともリノベーションのことも全てを見据えて日々お客さまに寄り添う。

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空気の質の重要性

私たちは1日に約2kgの食べ物を摂取します。

もちろん汚れた食べ物や腐った食べ物は誰も食べません。

しかし、成人一人が1日に吸う空気は15kg~20kg。

食べ物の約10倍くらいにもなります。

空気は汚れていても吸わないわけにはいきません。

呼吸ができなくなってしまいます。

昔、住宅金融公庫の断熱基準がスタートした頃から断熱性、気密性がUPしました。

気密性がUPすると化学物質から発生する有害な物質も住まいの中にたまってしまいやすくなります。

寒くなくなった変わりに、汚れた空気を吸ってしまうことが増えたのです。

シックハウス症候群とは?

シックハウス症候群とは、建材や接着剤、塗料などから放散される化学物質や動物の毛・ダニやカビ、喫煙によって発せられる煙などによって、「家の中にいると体調がわるくなってしまう」というものです。

頭痛、目や喉の痛み、吐き気、めまいなど様々な症状が確認されています。

先に述べたように住宅の気密性が増したことで、建材などから発生する化学物質が室内に蓄積しやすくなったことから新築のお住まいやリフォーム、リノベーション後のお住まいが苦手、体調が悪くなる、という方が増えてきました。

物件案内などのときに「新築のにおいがいや」「頭が少し痛くなる」といった方はこういった化学物質に反応しやすい体質の方なのかもしれません。

シックハウスの原因は?

シックハウス原因化学物質13品目

住宅建材から発生するホルムアルデヒド等が問題となり、シックハウス法が施行されました。

この当時、厚労省が定めたのは次の表にある13物質です。

これらの13品目について指針値以下の発生におさえるのが望ましい、とされています。

厚生省指針13品目シックハウス原因化学物質

住宅において使用規制があるのは2品目のみ

しかし、この13品目の指針値。

じつは建築基準法上、住宅において義務が課されているのは
「ホルムアルデヒド」と「クロルピリホス」のたった2種類のみです。

建築基準法では「クロルピリホス」は使用禁止。

「ホルムアルデヒド」は含まれる建材の使用量を規制があるのみで、禁止されているわけではありません。

建材などに良くかかれている表示として
「F☆☆☆☆(フォースター)…5mg/㎡・h」というものが良くあります。

これはホルムアルデヒドが含まれていないわけではなく、
ホルムアルデヒドの揮発速度が5mg/㎡・hであるということなのです。

たまに住宅販売の営業マンが「うちはF☆☆☆☆の材料を使ってますので、健康に配慮してます」という言葉を耳にします。

健康的な人には良いかも知れませんが、ホルムアルデヒドを含んでいるということは、
敏感な方にはシックハウスなどの要因になることもあるというリスクを知っておかなくてはならなく、
決して健康に配慮した材料ではないということです。

無垢の床材など天然のものにはホルムアルデヒドなどの有害な化学物質は含まれませんので、
このF☆☆☆☆という表示義務の対象外になっています。

皆さん誤解しがちなのですが、F☆☆☆☆という表記がない無垢の床材の方がむしろ「安全」ということです。

住宅以上に学校の建物の規制が厳しい

このシックハウス法が2002年に施行された後も、学校ではシックスクールという問題が起き、
原因は床のワックスや塗料に含まれる「トルエン」「キシレン」などがありました。

学校衛生基準では上記のとおり6物質が規制されています。

子供たちの健康を守るために、「学校」では他の建物よりも厳しい基準が設けられているのです。

その規定値を守ってもシックスクールがその後も起きており、それぞれの指針値を満たしても、
様々な化学物質の総量(TVOC)が多いと問題であるという事実もありました。

健康のためには食べ物以上に「質のよい」空気は重要です。特に一日の大半をすごす住まいであれば尚更。

でも敏感な方などは必ずしも現状の規制だけでは十分といえないこともあるので、注意が必要です。

屋外よりも室内のほうが実は危険

一時期話題になったPM2.5。

もちろん無い方が良いですが、知っていただきたいのは家の外の空気の方が、室内空気より断然きれいであるということ。

図は埼玉県内の大気中のホルムアルデヒド濃度の結果です。

基本的に夏場など暑い時期にホルムアルデヒドはたくさん揮発します。

その量は少ない年で8~9μg/m3、多い年で15μg/m3です。


>全国環境研会誌 Vol.41 No.2(2016) <報文>埼玉県内の大気中ホルムアルデヒド濃度の継続観測結果

一方で「室内」の方はどうでしょうか?

最初のシックハウス法の表にある厚労省出したシックハウスの指針値は

0.88ppm=100μg/m3 

ホルムアルデヒトの濃度が100μg/m3を切るようにしておきましょう、ということです。

屋外が先ほど書いたように8~15μg/m3なので、室内は実に大気中の濃度の7~10倍(!)のホルムアルデヒト

の濃度でも基準を満たす、ということになってしまうのです。

子供のシックハウスはより深刻なことも

下記の表は東京都福祉保健局が出している子供と大人の呼吸量の比較です。

体重1kgあたりに換算すると子供は大人の2倍の空気を吸っていることになります。

そもそも室内のシックハウスの基準自体が大気中の7~10倍にならないように、といった数値ですし、

子供はそんな空気を大人の2倍吸うことになってしまう、ということなのです。

あまり神経質になりすぎるのもよくないですが、敏感な方などは頭にいれておきたいポイントです。


>化学物質の子供ガイドライン「室内空気編」|東京都福祉保健局HP

リノベーションでのシックハウス対策

ここまでみてきたように、体質によっては無視できないのがシックハウスです。

その原因が主に「発生した有害物質」が「室内に滞留してしまう」ということにつきるため、リノベーションでできる対策は2つです。

・有害物質を発生させない⇒自然素材などを用いた住まいにする

・有害物質を滞留させない⇒風通しのよい、換気がしっかりできる住まいにする

換気については2003年以降の新築住宅では「24時間換気システム」の設置が義務化されています。そのため、それ以前の建物よりは換気がよくなっています。

リノベーションの間取りなどで換気のよい住まいにしていくこととあわせて、こういった2003年以降の住宅を選んで購入する、といったポイントもシックハウス対策としては有効です。

とはいっても、マンションなどですべてを自然素材でリノベーションする、というのは困難です。工事に使用する接着剤や住宅設備に使用されている材料まで厳密に自然素材のみにする、となると費用も手間も大きくかかってきます。

気になる方はご自身の症状に応じて必要な対策を考えておくようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

快適性を保つための工夫も考えるのが私たち設計士の役目です。

プランニングや機器の選定のアドバイスなどもそういった視点で考えています。

掃除機をかければ汚れた排気が出ますし、ガスファンヒーターのように室内空気を燃焼し、
室内に排出する器具を使う場合も換気への注意が必要になります。

カビが生えないように、家具や冷蔵庫も壁から離して置くというのも工夫のひとつです。

きれいで快適な暮らしを送るためにも是非「空気の質」を意識してみてはいかがでしょうか?


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