リノベアイデア 寸法の話

設計でいちばん重要なのは寸法

建築家の吉村順三は「私は建築家として、自分では寸法にいちばん責任をもっている」といっています。

今回は寸法の重要性というお話です。

空間が美しく見えたり、十分な機能を果たすのは適切な寸法によって作り出されているからです。

寸法は素材や色やスタイルよりもはるかに重要です。

ファッションが好きな人は、洋服でも生地やカラーやデザインよりも寸法が重要であることは経験的によく分かるのではないでしょうか。

着心地が良くかつその人が最も素敵に見えるのは、なによりジャストフィットした服を身に着けたときだからです。

部屋は広さよりも寸法重視で

例えば、部屋の広さは普通日本では、畳の枚数に換算した広さで表示され、「寝室は最低8畳は欲しいね」
という風な会話になるわけですが、洋室の場合は、この畳の枚数に換算した広さ以上に部屋の寸法が大切です。

人がストレスなく通れる通路の幅は肩幅の寸法の600ミリ程度といわれています。

この寸法を大きく下回ってしまうと、家具と家具の間あるいは家具と壁の間を身体を斜めにするようにしてすり抜けなくてはならず、
これが毎日のことになると、結構、ストレスを感じることとなります。

例えば寝室であれば、ベットと周囲の壁との間は最低550ミリは欲しいところです。

外国のマンションの間取り図などを見ると、必ず部屋の縦横の寸法が記載されています。

部屋は広さというよりも、想定する家具をどう置くかという視点からみることがあたり前になっているのですね。

洋服好きの人はクローゼットの寸法も気になるところです。

メンズの場合、スーツはハンガーに吊るした状態で最大で500~550ミリ程度の幅があります。

ウールのコートでは550~600ミリ程度になると思います。

男女共用のクローゼットを造り付けで設ける場合、
ワードローブが扉などで押し潰されることなく収められるクローゼット内部の有効寸法は、600ミリが理想ということになるでしょう。

美意識があらわれる見付け寸法

本棚などの棚板を正面からみた際の小口の寸法は見付け(みつけ)と呼ばれます。

棚板のほかにキッチンや洗面のカウンターの天板、造り付けのデスクの天板、建具枠など、
住宅の室内には正面からみた見付けの寸法が空間のイメージを左右する部分が意外に多く存在します。

これらの部分の見付けの寸法にはクローゼットの奥行きのような理想的な数値があるわけではありません。

機能的な意味での限界値はありますが(例えば割れたり、折れたりしない最小寸法など)、
むしろ見付けをいくらにするかは、住まい手の美意識によるところが大きいといえます。

例えばキッチンの天板の場合、ステンレスの天板の見付けを極力薄くしてシャープに見せるデザインもあれば、
石や人工大理石であえて見付けを厚くして存在感を見せるというデザインもあるわけです。

寸法に関しては、キッチンや洗面台の高さ、キッチン背面のワークスペース、収納や本棚の奥行き、作り付けデスクの高さや奥行きなど、
使う人の身長や想定する使い方で最適な寸法が異なってくる部位もあります。

限られた専有面積のマンションにおいてはすべてを理想の寸法で作るわけにはいかないですが、
こだわりたい部分に関して、一度、寸法という視点で設計図を眺めてみてはいかがでしょうか。


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