巾木(はばき)とリノベーションの話

- 公開日:2015.2.11
- 更新日:2023.10.20
リノベーションで当たり前のように出てくる言葉がこの「巾木」(はばき)」。
さて、どんなものかイメージできますか?
読み方もどんなものかもわからない、という方が多いのでは?
リノベーションの設計ではディテールのひとつである巾木。お住まいのデザインに与える影響は思った以上に大きいもの。
お住まいのどんなところに使われるものなのか、どんな役割のものなのか、はたまたリノベーションではどんな風にデザインに活かされるのか。
今回は巾木の話を掘り下げます。
巾木とは?
リフォームやリノベーションの事例や資料をみていて「巾木」の読み方がわからずに困った、なんて方も多いことでしょう。「はばき」と読みます。また「幅木」と表記されることもありますが同じものです。
「巾木」とは、「壁と床の接点に設けられる水平の部材」のことです。こういわれても今一つピンとこないと思います。↓の写真をみたら「あれのことか!」とイメージできる方も多いでしょう。

巾木の役割
巾木の役割は主に2つ。ひとつは床と壁で異なる素材による部材がぶつかる接点で、相互の部材の切断面のばらつきなどを隠して納めるというものです。
床はフローリング、プラスターボードにクロスをはった壁、とバラバラの素材ではどうしても壁と床の接点に隙間ができてしまいますが、巾木があることでそれらを隠すことができます。
巾木のもうひとつの役割は、掃除機や家具が当たって傷などがつきやすい壁の下部を保護することです。
お掃除ロボなどを活用していると壁の下部に何度も衝突してクロスがはがれてくるなんてこともよくあります。
巾木の3種類の工法
巾木はどんな工法で納めるかによって下図のように3つの種類があります。

出巾木
最近の分譲マンションでは普通は、MDF(木材チップを板状に整形したもの)にオレフィンシートなどを張った高さ50~60ミリの溝つきの巾木が壁の上から取り付けられているのが一般的だと思われます。いわゆる出巾木(ではばき)と呼ばれるディテールです。
面巾木と入巾木
巾木に関してはこの出巾木のほかにさまざまなディテールが考えられてきました。
面巾木(つらはばき)は、巾木と壁面が同一の面となるように巾木を取り付けたものです。入巾木(いりはばき)は、巾木を少し壁面から引っ込んだ位置に取り付けたものです。
いずれも出巾木に比べると巾木の存在が目立たなくなり、特に巾木と壁を同色のカラーにすると床と壁がぶつかる入り隅のラインがよりすっきりと見える納まりです。ただし、面巾木や入巾木とするためには壁のプラスターボードをニ重張りにするなどの施工上の一手間が必要になります。
巾木のサイズや形状
巾木のサイズや形状も様々なものがあります。
巾木の高さを40ミリ程度に抑えて横のラインをよりスリムに見せることが多いですが、逆に高さを120ミリや140ミリとして建具枠とともに壁面を構成するひとつのエレメントとしてしっかりした存在として見せるというデザインも考えられます。
また、溝の凹凸がないフラット面状のシンプルな巾木やヨーロッパなどでよく見られる凝った装飾を施した巾木など形状やデザインも多彩です。
巾木の素材
ここまでは巾木の工法や形状を見てきましたが、「何でできているか」によってもお部屋の印象は変わります。
一般的によく用いられるのは「ソフト巾木」と呼ばれる塩化ビニールなどでつくられた柔らかくて加工しやすいものです。やわらかいため、お部屋の隅っこ(入隅、出隅)などのコーナーになっているところも施工しやすいです。
巾木がはがれてきやすいコーナーの箇所には、こちらも塩化ビニールなででできたコーナーキャップを用いる場合もあります。
その他よく用いられるのは「木巾木」です。その名の通り木製です。木の質感が美しい上にソフト巾木よりは丈夫です。一方で施工しやすさについてはソフト巾木に劣ります。木巾木でコーナー箇所がぴったりと美しく施工されているお部屋は魅力的です。
他にもアルミなどの金属製の巾木もあります。
こういった質感の違いをあえてお部屋のアクセントにするか、目だたないようにすっきりとさせるか、などにも様々なアイデアがわいてきますね。
巾木なしにするメリットとデメリット
壁と床が取り合い部分をうまく納め、壁面を保護する目的もある巾木ですが、空間の隅をもっとシンプルに見せたい場合は、あえて「巾木なし」というディテールとすることも考えられます。
巾木なしにするメリットは、壁と床が一本の線で納まるすっきりとした美しさを実現できることです。リノベーションでは多くの方が「巾木なし」にしています。
一方で巾木なしにするデメリットは、日常の生活では家具や掃除機などが当たらないように気をつけることが求められること、万一壁に汚れや傷がついた場合、きれいに修復しようと思うと壁のボードまるまる1枚分を交換する必要があるなどです。
とはいえ、汚れや傷なども住まいの味のひとつ、という見方もできるので、なにを優先するかは住み手次第です。
ディテールは機能だけではありません。機能よりも強いこだわりを反映したディテールによって満足度の高い空間や美的空間を実現することもありうるところがディテールの面白いところです。
リノベーションでの「巾木」
巾木はお住まいの細部のデザインにあたるものですが、リノベーションでも細かいところをみていくと、薄型の巾木を使用してすっきりとしたデザインにしたもの、巾木なしにしたもの、壁の色味と巾木の色味をかえてアクセントになるようにしたものなど、様々です。






ついつい見落としがちではありますが、リノベーションの事例写真を眺めるときに、巾木をどんな納まりにしているのか、どんなものを使っているのか、なども注目してみると面白いかもしれません。