ARTICLE2022年新制度版「住宅ローン減税」にまつわるよくある誤解<①あまり教えてもらえない基本編>

- 公開日:2020.7.23
- 更新日:2023.4.5
さあ家を買おう!多くの方は「住宅ローン」を使って家を買います。
そして多くの方がなんとなく知っているのが「住宅ローン減税」という制度です。
でもこの制度、誤解している人が意外と多いもの。
よく「最大○○円お得!」なんて記事もでていますが、実はこの「最大」までのメリットをうけられる方は多くはありません。
おまけに毎年のように制度がマイナーチェンジされ続けて、今年2022年には大きな変更がいくつかなされる見込みで、今から住まいを購入する方は必ずこの変更後の制度が適用されることになります。
なんとなく理解したつもりになっていたのが古い制度のものだと、「しまった!」なんてケースも出てきます。
知らないで損してるかも!?「住宅ローン減税」にまつわるよくある誤解をあげてみました。
※以下の記事は2021年12月に閣議決定の上発表された「令和4年度税制大綱」に基づき作成しています。こちらの内容が正式に国会で承認された後に適用開始、となります。
とはいっても、事実上は決まったようなものですが・・・
目次
<2022年1月28日更新>
1. そもそも「住宅ローン減税」って何?
「住宅ローン減税」とは、すごく簡単にお伝えすると、「新しい家を買ってから10年間(もしくは13年間)にわたって、毎年年末時点の住宅ローン残高の0.7%にあたる金額が、所得税や住民税から減税される」というものです。
昨年(2021年)までは「毎年年末時点の住宅ローン残高の1%にあたる金額が、所得税や住民税から減税される」という制度でしたが、この「1%」が「0.7%」に減った!というのがずいぶんいろいろなところで話題になりました。
住宅ローンの金利が0.4%台なども当たり前になっている現状では、
0.4%の金利でお金を借りているのに、毎年残高の1%分の税金が返ってくる
→住宅ローンを沢山借りた方がお得!
→中には必要以上に沢山ローンを借りようとする方もいるし、沢山ローンが借りられて、
高額な物件を購入する高所得の方が有利!
といった状況になってしまっています。
今回の制度変更にはこういった不適切な状況を変えよう、という背景があります。
一方で、新築物件や中古でも業者によるリノベーション済みの物件(「買取再販」なんて表現で書かれています)といったものについては「10年間」から「13年間」にしよう、といったケースもあるので、詳しい条件なんかは以下の国土交通省のサイトなどをみてみてくださいね。
※国税庁、国土交通省などのサイトでもページによっては2021年までの制度のことしか記載していないケースが多いのでこの時期は特にご注意ください!
図なんかを使ってもっとわかりやすく説明しているサイトも数多くありますが、この制度は今回も含めて毎年のように内容が変わるのが悩みの種。
「自分たちはいったいいつの時点の制度が適用されるのか」は「お住まいの購入の契約をいつおこなったか」や「いつからそのお住まいに住み始めたか」で複雑に決まっていますので、「わからない!」なんて方は契約日と居住開始日の2つの年月日を確認した上で税務署などに電話して確認してみましょう。
一方で、「これからお住まいを買う」という方は例外なくこの新しい制度のもとで検討をすすめることになります。この新しい制度でも、「いつ契約するか」「いつから住み始めるか」で条件がかわってきますので、特に新築の購入などで契約から居住開始まで時間が大きくあいてしまう方は注意が必要です。
このように複雑な条件の追加については記載を見落としてしまう恐れもあるので、説明してあるサイトをみるときには必ず「いつの記事か」もあわせてチェックするようにしましょう。
さて話を戻します。
中古マンションや戸建ての購入を検討される方にとって、「住宅ローン減税」の基本は「新しい家を買ってから10年間にわたって、毎年年末時点の住宅ローン残高の0.7%にあたる金額が、所得税や住民税から減税される」ということ。
したがって、今年2021年に住宅ローンを使って家を買って住み始めた、という方は以下のようになります。
2021年末に2000万円の住宅ローンの残高がある
→2021年の収入に対する所得税が「最大」14万円(=2000万円の0.7%)安くなる
おそらくここまでは頭に入っている方も多いはず。
逆に、「だからこそ」いくつかの誤解が生まれてしまいます。
2. 「最大○○円お得!」の落とし穴①~あなたは最大幅の減税をうけられるだけの税金を支払っていますか?
ここでもう一回思い出してください。
「住宅ローン減税」はあくまで「減税」です。
みなさんが支払う所得税や住民税が「減税」される、というのが基本です。
先ほどの例でお話すると、2021年末に2000万円の住宅ローンの残高があるかたといって「14万円もらえる!」というわけではありません。
皆さんが支払っている所得税や住民税が「最大」14万円分安くなる、ということです。
これが純粋にお金をもらえる「給付金」や「助成金」との大きな違いです。
あくまで「税金が安くなる」ということなので、もともとの所得税や住民税を14万円以上支払っていなければメリットも限定的になります。
所得税と住民税の合計で10万円しか払っていない方はどうがんばっても10万円分までしか減税されません。
特にご家族の扶養控除を受けている方は所得税や住民税の支払い金額も少ないので、「あれ?思ったほどお得じゃない!」なんてケースもあるかもしれません。
住宅ローン減税のメリットを最も活かせるのはもともと「沢山税金を払っている方」ということになるんです!
※実際には住宅ローン減税をうけるための、所得額の制限や住民税の中で控除対象外の部分がございますので、もっともっと詳しく知りたい方は税理士の先生に確認してみてくださいね。
3. 「最大○○円お得!」の落とし穴②~「消費税がかからない」物件を買ったときは減税枠も小さい!
さて、ここで問題です。みなさんが物件を買う時、「消費税」ってかかると思いますか?
どうでしょう?あまり意識したことがなかったのでは?
SUUMOやHome’s、at homeなんかで物件を探してみても物件価格は「○○〇万円」という表示だけで消費税の話はでてきませんね。
実は物件によっては消費税のかかるもの、かからないものいろいろありますが、全て「税込み」の金額で表示されているのが通常です。
なので、「3000万円の物件がほしい!」というときに、「別途消費税が○○円必要です」なんてことにはなりません。
消費税がかかろうがかかるまいが、物件を買うために必要なお金は「3000万円」ということになります。
ではどんな物件に消費税がかかってくるのでしょうか?
これは実は「売主が誰か」で決まってきます。
ざっと以下のような感じです。
・業者が売主の場合→「土地」には消費税はかからないが、「建物」には消費税がかかる
・個人売主で自分の住まいなどを売る場合→「土地」にも「建物」にも消費税はかからない
一般的には「3000万円の物件」といったときに、「土地がいくらで建物がいくら」といった明細を出すことはあまりありませんし、前述の通り消費税がかかろうがかかるまいが、トータルで必要な代金が「3000万円」ということには変わりありません。
ここまで言うと「なんだ、どーでもいいじゃん」なんて声が聞こえてきそうですが、実はこのポイントは「住宅ローン減税」にとっては意外と重要かつ皆さんが誤解しやすいポイントなのです。
「住宅ローン減税」の減税枠を決める条件の一つに「新築の物件の購入」もしくは「不動産業者がリノベーションして販売している物件の購入」か、「それらにあてはまらない物件の購入」か、というものがあります。
従って、おなじ3000万円の物件を買っていても、消費税を払って買った人の方が住宅ローン減税での最大控除額が大きかったり、10%といった「高い」消費税を払って買った人の方が減税を受けられる期間が長くとられていたり、といったメリットがあります。
よく言われる「最大○○円お得!」を中古物件の購入でも適用しようとすると、物件の広さや築年数、あなたの収入といった通常の条件以外にも
・消費税を支払って「不動産業者から」物件購入している
・その「不動産業者が」予め一定規模以上のリノベーション工事をしている
※リノベーション工事の規模が小さかったり、不動産会社が「増改築工事証明書」という書類を取得できていない場合は最大枠の控除が使えない可能性があるので要注意!
・あなた自身が住宅ローン減税の最大枠まで住宅ローンを借りている
※いくら最大控除枠が3000万円あってもそもそも住宅ローンを2000万円しか借りていない、といった場合は当然ながら最大枠までのメリットはうけられません。
・あなた自身が、そもそも所得税・住民税を沢山支払っている
※いくら控除額が毎年21万円発生していても、当然それより多い額の所得税・住民税を支払い続けていないと控除のメリットはうけられません。
・あなた自身が、さらに13年以上にわたって、住宅ローンの残高を3000万円以上残している
※当然ながら、住宅ローンは返済が進むと残高も減っていきます。「最大」のメリットを受けるためには、13年間にわたって、3000万円以上の借金を残しておく必要があります。
こんな条件を全て満たす方のみ、ということになります。
「中古を買って、リノベーション」では多くの方が「個人の方が自分の住まいを売却している」という物件を購入されるので、物件価格にそもそも消費税は含まれていないケースが殆ど。
個人の方から普通の物件を購入する場合は住宅ローン減税の控除枠も2000万円分まで、となるので、よく言われる「最大控除額:住宅ローン3000万円分×0.7%=21万円」を13年分で「273万円お得!」なんて条件が当てはまる方はあまりいらっしゃらないのでは?
不動産業者が売主になっていることが多い「リノベーション済み物件」を買って少しカスタマイズで追加リノベをしよう、なんて方はあてはまるかもしれませんが、当然ながら最大限控除を受けようとすると「13年もの間にわたって住宅ローンの残高を3000万円以上残している」というのが必ずしもお得といえるかどうかは別の問題です。
また、SDGSや脱炭素社会がさけばれる昨今、今回の改正では、新築中古を問わず、「長期優良住宅」「低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」といった物件を購入する場合は、住宅ローン控除の控除枠が大きくなる、という制度にもなっています。
とはいうものの、残念ながら中古物件の売買ではこれらの省エネ性能が証明できるような住宅に出会うケースはまずありません。
リノままのお客様を現在の制度にあてはめると、「最大控除額:住宅ローン2000万円分×0.7%=14万円」を10年分といったパターンで利用できる方が一番多いですね。
4. 「住宅ローン減税」って結局いくら得するの?
「住宅ローン減税」って結局いくらの得になるの?という質問をよく受けます。
が、正直なところ正確には誰にもわかりません。
なぜなら先にお話しした通り、「住宅ローンの残高に応じて」「所得税や住民税が安くなる」というのが仕組みの根本です。
10年以上先にわたって、「所得税や住民税をどのくらい払っているか」や「住宅ローンの残高をどのくらい残しているか」を正確にシミュレーションすることは困難です。
扶養家族ができて税金が安くなることもあるでしょうし、収入が増えて税金が高くなることもあるでしょう。
住宅ローンもまとまったお金ができたら繰り上げ返済するケースもあるでしょうし、変動金利であれば、金利が増減して、残高も変わっていることもあるでしょう。
そもそもが「住宅ローン」という借金をもとにした「減税」です。
住宅ローン減税のメリットだけを大きくしようと考えるのであれば、沢山住宅ローンを借りて(=沢山借金をして)残高をなるべく減らさない/所得税・住民税の税金を沢山払い続ける、のがベスト、ということになりますが、本当にそれでいいですか?
「住宅ローン減税」のメリットは確かに大きなものです。
ただ、この金額「だけ」をあてにして物件購入やリノベーションの予算を膨張させてしまうのは危険です。
事前に想定できるのはあくまで「この物件を買ったら最大で○○円の減税がうけられそう」という「予想」だけです。
あなた自身のこれからの暮らしの中では必ずいろいろな変化があります。どこまでこのメリットを享受できるかは今の時点では見えません。
なので、必要な準備は全て済ませた上で、「もし沢山税金が戻ってきたらラッキー」といった程度のとらえ方をしておく方が暮らしにゆとりが生まれると思いますよ。
さて、前半では「そもそも住宅ローン減税って何?」といった「そもそも論」からの「よくある誤解」をみてきました。
後半ではいよいよ「住宅ローン減税を使う!」ってときによくある
・住宅ローン減税が使えるのに「使えない」と思って見落としてた!
・住宅ローン減税を使うつもりでいたのに使えなかった!
なんて誤解をみていきましょう。
物件を決める前に必見です!
↓
〇2022年新制度版「住宅ローン減税」にまつわるよくある誤解<②知らないと損する!要注意!実践編>

多くの方は「住宅ローン」を使って家を買います。そしてなんとなく知っているのが「住宅ローン減税」という制度。でもこの制度、誤解している方も多くて要注意!「使えない」なんて思っていても、よく調べたらしっかり減税を受けられるケースもあれば、「住宅ローン減税」をあてにして物件を買ったのに実は使えなかったなんてケースもあります。物件を決める前に必ずおさえておきたいポイントをいくつかあげてみました。
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そんなことより、周りに流されず、あなたにとって「ちょうどいいリスク」を探して
「自分らしい」決断をしてみませんか?
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「中古を買って、リノベーション」で物件探しをはじめる前に
「まず」知っておくべきことは「古い物件って本当に大丈夫?」
「どうやって良い物件を見極めるの?」ってことと、
「本当にこんなに多くのお金をかけてよいの?」
「いろんな費用も含めて毎月いくら払うことになるの」ってこと。
「古い物件の見極め方」についてのお話です。