マンションへの断熱材の設置は大変?費用や施工方法、施工事例を解説

この記事では、マンションの快適な暮らしを実現するために必要な「断熱材」について紹介いたします。種類や設置方法、リノままで行った事例などを解説し、リフォーム時に断熱材を設置する場合に役立つ情報を提供します。

佐藤和裕

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佐藤和裕

一級建築士。宅地建物取引士。インテリアコーディネーター。不動産のこともリノベーションのことも全てを見据えて日々お客さまに寄り添う。

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近年、中古マンションや中古戸建てを購入し、リノベーションして住むという方法を選ぶ方が増えています。

ですが、中古マンションや中古戸建てには断熱材が入っていなかったり、あっても劣化して効果が薄れてしまったりしてていることも。

そのため、リノベーションのタイミングで断熱材を設置することが大切です。本記事では、日本でよく使われる断熱材の種類や、それらを取り付ける際のポイントについて解説します。

マンションに断熱材がないことによるデメリット

マンションに断熱材がないことによるデメリットは以下の2つ。

  • 結露の原因になりやすい
  • 夏は暑く冬は寒い

それぞれのデメリットをご紹介いたします。

結露の原因になりやすい

最近の新築では省エネ基準等で断熱対策も進んでいるものの、中古マンションや中古戸建ての場合は古いと断熱材が入っていないことがあり、中古はもちろん、新築でも結露がひどくカビが生えているなんてこともあります。

↓窓の結露


>実家の「結露問題」を考える 窓の結露を抑制し、健やかな実家に!|YKK AP

↓北側の部屋の結露によるカビ

そこでできる対策を知っておき、温熱環境が心配な方は、打ち合わせの際に要望として出してみましょう。

マンションも戸建ても基本的には対策は同じです。

旧耐震のマンション、戸建てでも昭和40~50年代以前に建てられたものは断熱材が入っていないことが多く、仮に入っていたとしても今と基準が違うため、断熱性能の期待が持てません。

そんな場合は壁に断熱材を入れることで断熱対策、結露対策になります。

夏は暑く冬は寒い

木造に比べ、鉄骨コンクリートでできたマンションの場合は断熱材がないがないことも多く、断熱材が無いとその影響を受けやすくなってしまいます。

断熱材が入っていない場合は外壁に面した壁の断面はこのようになっています。

この状態だと、冬は寒く、夏はとても暑くなります。
冬場は特にコンクリートが冷たくなるため、屋内との温度差で結露が出ることも多いです。

そこで断熱材を入れるときはこのようになります。

断熱材の種類にもよりますが、その分壁が「分厚くなる」ということです。

※よく建築現場では「壁がふける」「壁をふかす」などと言います。

例えば断熱材が4cm厚さとすると、大体合計で5.5~6cmくらい壁が飛び出る形になります。

マンションでも断熱材の工事はできる?

マンションでも共用部には手を加えない形での断熱材の工事は可能です。部屋の壁や床をはがしてコンクリートの躯体と壁や床の間に断熱材を入れる「内断熱」という方法で専有部の中に断熱材をいれていく工事であれば、比較的簡単に行えます。

マンションのリフォームやリノベーションでは「共用部」の一部を交換する、壊す、といった工事は原則できません。そのため「いかに共用部に影響しないように工事をするか」がポイントになります。

マンションの壁・床への断熱材の施工方法

断熱材を入れる方法は大きく分けて

  • 乾式断熱
  • 湿式断熱

の2種類があります。

断熱材を入れる際には、上記のいずれかの方法を選ぶことになります。断熱材を入れる際は、リフォーム会社などと相談しましょう。

乾式断熱

乾式断熱は、木材を固定して作った下地の間に断熱材を貼り付ける方法です。

マンションの部屋の場所に関係なく行えることに加え、費用もそれほど高くなりません。

使用できる断熱材の種類も多いため、予算に併せて断熱性能を選択することができます。

ただ、断熱材が板状になっているため、複雑な形状の部分には貼り付けられません。また、複数の断熱材を並べてはめ込むので、気密性が低くなるのがデメリットです。

最近では、二重で断熱材を貼り、その上から仕上げをする方法が主流となっています。

湿式断熱

湿式断熱は、下地の間に発砲ウレタンなどの泡状の断熱材を吹き付けていく方法です。

形状が複雑な部分にもあわせて施行ができることや、すき間ができにくいのが湿式断熱のメリットです。

デメリットとしては、トラックに積んだコンプレッサーからホースを利用して泡を圧送するため、トラックの駐車場所が必要になることや、高層だと施工ができないことがデメリットです。また、価格も乾式断熱に比べ高価になることが多いです。

窓の断熱方法

窓ガラスを入れ替える

壁や床以外に、窓やドアも熱が出入りしやすい箇所ですので、窓ガラスを交換したり、サッシを交換することで断熱効果が得られます。

断熱ガラスには、ガラスを2枚重ねた複層ガラスや3枚重ねたトリプルガラスなどがあり、厚みを持たせることで断熱をします。

また、2枚のガラスの間にガスを注入した「Low-E 複層ガラス」は、夏の暑さをブロックする遮熱効果もあります。

ただし、マンションの窓ガラスは原則共用部となるので、各住戸で入れ替えることはできない場合もあります。

サッシの種類を変える

一般的なサッシはアルミ製ですが、熱伝導率が低い樹脂製のサッシに交換することも、断熱につながります。

ただし、マンションでは大きさの都合上サッシの交換が難しかったり、サッシは共有部とされていてリフォームができない場合もあるので注意が必要です。

内窓を設置する

内窓は、窓の内側にもう一つ窓を取り付ける方法です。

マンションの場合、もともとの窓やサッシを交換する工事はできないケースがほとんどです。これらは共用部にあるものを一旦壊したり外したりすることになるためです。

内窓であれば、こういった共用部には手を加えることなく、もう一つの窓を取り付ける形になるため、基本的にはマンションでも問題なく施工できます。

ドアの断熱方法

ドアも、窓と同じように熱が逃げやすい場所です。

特に、古いマンションの場合、ドア自体が薄く、隙間から冷気や暑気が入り込み、快適な室内環境を維持することが難しくなってしまいます。

ドアの耐熱性能を向上させる方法としては、

  • 断熱シートを貼る
  • ドアを交換する
  • ドアの周囲をシーリングする

の3つがあげられます。

ただし、ドアはマンションの共用部にあたりますので、ドアの交換といった工事には制約があります。マンションの規約を確認し、リノベーション会社に相談することをおすすめします。

断熱材の施工

マンションの場合

↓実際の断熱材施工後写真

こちらはスタイロフォームという断熱材で「押出法ポリスチレンフォーム断熱材」の一つになります。

通常リノままでは「断熱性能対策等級4レベル」の断熱材を推奨しています。

たくさん断熱材もあるのでどれを使うかは自由ではありますが、マンションの場合は性能が高く、薄くて済む上記の「押出法ポリスチレンフォーム断熱材」が実際には多いです。

(「押出法ポリスチレンフォーム断熱材」の場合は壁には厚さ35㎜必要の為、40㎜の厚さなら等級クリアになりますが、発泡ウレタンなどでは40~45㎜必要、グラスウールでは45~55㎜など断熱性能により壁も分厚くなります。)

一戸建ての場合

断熱材が入っていない場合は外壁に面した壁の断面はこのようになっています。

↓赤い丸のところに断熱材が入ってない、もしくは入っていても薄いなど

↓入っていたとしても劣化して垂れ下がりが出てしまっている例

 
>リフォーム現場解体時のグラスウール写真|OK-DEPOT

上記のような場合にはリノベーションする際に断熱材も入れることをおススメしています。
断熱材を入れるには壁を基本剥がさなくてはいけません。なので、リノベーションの時に一緒にやる方が効率が良いのです。

※壁を剥がさなくてもマンションと同様に既存の壁に断熱材を増し張りするということも可能ですが、その分部屋が狭くなります。

基本的には図のように「柱」と「間柱」の間に断熱材を入れていくのが一戸建ての場合スタンダードな方法になります。

一戸建ての場合は柱の太さにもよりますが、例えば3.5寸角の柱の場合、最大105㎜厚さの断熱材を入れることができます。

厚みのある断熱材でも大丈夫なので、コストが安価なマット系の断熱材のグラスウールやロックウールが良く日本の住宅では使われています。

マンションに断熱材を設置するならリノままに相談

マンションのリノベーションなら、リノままにお任せください。

暮らしやすい住まい作りのため、断熱はもちろん、風通しや日当たりを考慮してお客様の理想の暮らしを探すお手伝いをいたします。

断熱材の種類は多く、設置する場所や戸建てなのかマンションなのかでもどの断熱材を選べばいいかは変わってきます。

断熱材のことや、リノベーションのことならぜひ一度リノままにご相談ください。

マンションへの断熱材の設置にかかる費用

マンションで断熱材の設置をする場合、1㎡あたり4000円~3万円程度の費用がかかるといわれています。これだけ金額の幅があると、正直なところいくらかかるかはイメージするのは困難です。

これらは断熱材設置にあたって、既存の壁や天井を一旦壊した上で断熱施工をする、その後復旧する、という一連の工事内容が含まれているからです。

そのため、断熱リフォームをおこなうのであれば、お住まいの全面的なリフォームやリノベーションの工事をおこなう際に同時に対応するのがおススメです。

全面的なリフォームやリノベーション工事であれば、どのみち既存の壁や天井は壊してしまいますし、新しい壁や天井をつくることにもなります。そのため純粋な断熱材の材料費と施工手間だけがプラスにかかってくる、という形になるためです。

断熱材の設置工事自体も結露しやすい北側の壁にしぼるなど、どうしても必要な箇所だけにすれば、数万円程度の費用増で対応できる場合もあります。

マンションの断熱リフォームで利用できる補助金

マンションの断熱リフォームには、各自治体や国からの補助金が利用できる場合があります。具体的には、「住宅省エネキャンペーン」や、自治体独自の補助金制度などがあります。ただし、補助金の内容や金額は、自治体によって異なるため、詳細については各自治体のホームページなどで確認することをおすすめします。

また、リフォーム業者によっては、補助金の申請手続きを代行してくれる場合もありますので、確認してみると良いでしょう。

住宅リフォームの支援制度(国土交通省)

マンションに断熱材を取り付ける際のポイント

マンションに断熱材を取り付ける際のポイントとしては、以下の点が挙げられます。

  • 部屋の位置によって適した断熱材は違う
  • マンションの規約を確認しておく

一つずつ解説いたします。

部屋の位置によって適した断熱材は違う

部屋の位置によって適した断熱材は異なるため、専門家のアドバイスを聞くことが重要です。

例えば、中住戸のように外部に面する面が少ない場合はボードを使う乾式断熱を使うと良いでしょう。梁が多かったり、複雑な構造の壁には吹付の湿式断熱を選択すると良いでしょう。

また、場所によっては乾式断熱と湿式断熱を組み合わせて断熱を行うこともあります。どれを選ぶかは、予算や部屋の場所を考慮し、リフォーム会社に相談することをおすすめします。

マンションの規約を確認しておく

マンションでは、管理規約によってリフォームができない場所があります。特に、窓やドアなどの共有部とされている部分に関しては、リフォームができないことが多いですので、事前に管理規約を確認しておくことが大切です。

日本の建物で使われやすい断熱材の種類

日本の建物で使われやすい断熱材の種類には、以下のようなものがあります。

  • グラスウール
  • 発砲ウレタン系断熱材
  • パーフェクトバリア
  • ウール
  • セルロースファイバー

それぞれの特徴などをご紹介いたします。

グラスウール

>アクリアマットα|ASAHI FIBER GLASS

最もポピュラーな断熱材で流通も多いのでコストも安価です。

原料はガラスを短い繊維状にし、化学合成樹脂で固めた断熱材。調湿性が無いため、壁内結露などがあるスペースには不向きです。

マット系の断熱材はスペースに合わせて丁寧に施工していきます。

※しっかりと施工しないと、隙間が空いたり、よれたりすると断熱材の効果も20~30%程度落ちるといわれています。

発砲ウレタン系断熱材

 
>断熱工事|NENGO

特徴は隙間なく、施工できること。手の届かない隙間も吹き付けるだけでもくもくと隙間まで膨らんで

断熱してくれます。断熱性能もマット系の断熱材より高めです。

パーフェクトバリア


>パーフェクトバリア|Endeavorhouse Corporation

口につけるペットボトルにも使われている「ポリエステル」を原料とした断熱材です。

グラスウールとは違い、接着剤不使用、VOCが0の安全な断熱材。マット系と施工方法は同じですが、透湿性能があり、年数が経ってもヘタレることがない断熱材。

ウール


>羊毛断熱材ウールブレスとは| ITN JAPAN

その名のとおり、羊毛からできた断熱材。ふかふかしてあったかそうですね。

こちらも基本はマット系断熱材。ただ、グラスウールなどのように湿気に弱くはないため、表面にビニールはつけていません。

防露認定もとれており、調湿性能もあるため、壁内結露などを防ぐ為にはうってつけの断熱材です。

コストは天然素材の為、割高にはなります。

セルロースファイバー

こちらは現場で吹込みする断熱材。

材料は未使用の新聞紙にホウ酸を添加したものを現場で貼ったシートに「ブオーッ」と機械で吹込みしていきます。

写真は床に施工しているものですが、吹込み後は体操マットのようにパンパンになります。

断熱材の密度は60~65Kで吹込み為、10K、13Kなどのマット系の断熱材の5倍以上の密度があるため断熱性能も高いです。(コストは一番高め)

特徴は断熱性の高さと、隙間なく施工できること、調湿、透湿機能があることです。

※ちなみに10K、13Kなどの断熱材の密度は、↓の1㎥あたりの体積の重さを示しています。(ご参考に)

まとめ

断熱材が入っていないと、夏は暑く、冬は寒くなりますし、結露が起きやすく、カビの原因にもなります。

マンションで断熱材を入れる場合は、壁の内側に断熱材を入れることが多く、断熱材にはたくさんの種類がありますので、選ぶのも難しいかもしれません。

マンションでも戸建てでも断熱対策は大事なポイントなので心配な場合はじっくり相談してみましょう。

また、マンションなのか、戸建てなのかや、部屋の位置などでも、どの断熱材が良いかも変わってきます。

リノベーションの機会に断熱対策もじっくり検討してみましょう。


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