マンションの間取りの歴史

マンションの間取りに歴史あり。今回はマンションの間取りの変遷をみてみましょう。

公営住宅の時代から現在のマンションの間取りのプランに至るまで、時代背景に応じた様々な特徴があります。間取りはマンションが分譲された時代を計るバロメーターといえます。

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リノまま編集部

リノままは「大きな企業の中の小さな設計事務所」として設計・工事・不動産それぞれの専門知識をもった少数精鋭のチームでひとりひとりのお客様と向き合っています

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ルーツとしての公営51C型標準設計


日本の集合住宅の間取りのルーツは、1951年に全国の公営住宅の標準設計として作られた公営51C型(図-1)です。食寝分離、就寝分離をテーマにDKスタイルが確立されました。よくみるとまだお風呂がついていません。その後、お風呂の設置、ステンレスキッチンの採用など進化を遂げながらDK+和室続き間というスタイルの間取りが公団住宅を中心に普及していきます。

日本初の民間による個人向け分譲マンションといわれているのが1956年の日本信販が分譲した四谷コーポラス(図-2)。なんとプランはメゾネットだったのですね。月賦販売の導入やオーダーメード方式など間取り以外も画期的な商品でした。

中LDKプランは70年代の定番


区分所有法が作られたのが1963年。1964年の東京オリンピックにかけて第一次マンションブームが起こります。そのころはマンションは都心立地の高級品というイメージでしたが、70年代に入り徐々に一般家族向けに普及していきます。

その頃の定番の3LDKといえば中央にLKDを設けた中LDKプラン(図-3)です。長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)がコンバスシリーズという名称で標準化するなど広く普及しました。リビングの採光やキッチンの独立性が重視される現在とは異なり、当時はまだ和室が生活の中心であり、キッチンとダイニングが一体化した公営51C型をルーツとしたDKスタイルが主流ということもあり、和室の採光を重視しDKが一体化した中LDKプランが定番の間取りとなっていました。フロンテージ(間口)は5.4メートル程度でLDKには直接の採光はなく、オープンキッチンが当たり前でした。

現在の間取りのベースが登場した80年代


『マンション白書』(長谷川工務店マーケティング部編著 住宅新報社 1986年)には80年初頭の代表的な3LDKのユニットプランが載っています。

先の70年代に普及した中LDKプラン(図-3)のほかに、続き間プラン(図-4)、縦長LDプラン(図-5)、横長LDプランn(図-6)などがが挙げられています。

なかでも縦長LDプラン(図-5)、横長LDプラン(図-6)は1990年代以降、現在まで分譲されているマンションの間取りのベースとなっているプランです。現在では、対面キッチン、アウトフレーム、全室洋室などに進化しています。

PP分離やライトコートなど新企画プランの登場


80年代初頭には、PP分離プラン(LDなどのパブリックゾーンと寝室などのプライベートゾーンを動線上分離して配置したプラン)やライトコート(住戸内に設けられた採光通風のためのヴォイド。廊下や洗面や浴室などに窓を設けたプランが可能)つき(図-7 パークハイツ鶴見 1986年)など「羊羹切り」と揶揄されたそれまでの画一的な間取りではない、採光通風や個室のプライバシーを重視した新企画のプランがいろいろと提案されました。間取りのバラエティは今よりも格段に豊富な時代でした。最近は建築費の高騰もあり、こうした新しい企画の間取りがなくなってしまったのはちょっと寂しい気がします。

億ションの間取りはどこが違う?


億ションの間取りの最大の特徴は、廊下が中廊下であり、居室がすべてバルコニー側(あるいは外周)に面しているという点です。開放廊下側に居室がある間取りに比べて、採光や開放感やプライバシーの面で優れるプランニングといえます。図-8は1983年に発売されたドムス元麻布の間取りです。広さに関しても一般のファミリータイプでは3LDKで60~70㎡が主流であるのに対して186㎡と圧倒的な広さをもっているのも特徴のひとつです。

まさに間取りに歴史あり、という感じですね。

* 図-1、図-2は『都市住宅の証言』(長谷工コーポレーションCRI  1988)より
* 図-3~図8は『マンション白書』(長谷川工務店マーケティング部編著 住宅新報社 1986) より


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