水回りを移動したいときのリノベーション・リフォームの基礎知識

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リノまま編集部

リノままは「大きな企業の中の小さな設計事務所」として、一級建築士、二級建築士、一級施工管理技士、二級施工管理技士、宅地建物取引士など、各専門知識をもった少数精鋭のチームでひとりひとりのお客様と向き合っています。

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古くなったキッチンやバスルームをリノベーション・リフォームして、毎日の生活をもっと快適にしたい! と考えている方は多いのではないでしょうか? 
単純に水回りの設備機器を交換するだけでなく、配置を変更することで、家全体の使い勝手を大きく改善することができます。

ただ、水回りの移動には、給排水管などの移動も伴うため、一定の制限があって何でも自由にはできないということには注意が必要です。

そんな水回りを移動するリノベーション・リフォームを成功させるために大事なのは、

・どんな制限があるのかをあらかじめ理解しておくこと

・しっかりと現地調査ができるリノベーション会社に依頼をすること

の2点です。

この記事では、マンションの場合を中心に、水回りの移動をともなうリノベーション・リフォームを検討する際に大切なポイントをまとめて解説します。

※水回りの移動は設備だけを交換して「元に戻す」リフォームより、間取り変更を含めて新たな価値をプラスする「リノベーション」と考えた方が適しています。以下では「リノベーション」という言葉で説明します。

水回りを移動するリノベーションの注意点

水回りは給水管や排水管、ガス管や排気ダクトによって共用部分の配管や外部とつながっています。

変更や移動が可能かどうか、費用がどれくらいかかるかは、こうした配管やダクトを通すためのスペースの有無(建物の構造)に大きく左右されます。

特に留意しなければならないのが排水管との関係です。

注意点1 パイプスペースは移動できない

マンションでは上の階から下の階まで、排水を流すための排水管「縦管(たてかん)」が通っています。その縦管を通している場所を「パイプスペース」と言います(図面では「PS」と書かれています)。

このPS内の縦管は共用部分のため、お部屋の所有者が移設したり加工したりすることはできません。そのためPSの位置を踏まえて、水回りの移動場所を検討することになります。

パイプスペースの例

赤い囲み部分が「パイプスペース(PS)」。建物によって位置はさまざま。

パイプスペース(縦管)の例

天井から床まで通っているのが「縦管(排水管)」。ちなみに青いのは給水管、オレンジは給湯管。

注意点2 排水管の設置には勾配が必要

キッチンやお風呂などから流れる排水は専有部分の排水管を通して、PS内の縦管に流れます。排水管は一般的には床下を横引きされていて、PSの縦管につながれています。

この専有部分の排水管を設置する際に重要になるのが「排水管の勾配」。排水を詰まりなくスムーズに流すために、排水管を設置する際の勾配が決められています。

キッチンの排水管なら、50分の1以上の勾配(50㎝の長さで1㎝上がる)が必要と決められてきます。例えば、縦管から2m離してキッチンを設置する場合は、4cm上がることになります。

つまり、縦管からキッチンを遠くに設置するほど、配管が上がってくる=床下の配管スペースの高さが必要=床が上がる=天井高が低くなる、ということになります。そのため、現在のキッチンの位置から極端に離れた場所に移動することは難しい場合があります。

配管勾配イメージ

注意点3 床の構造で工事範囲が変わる

床下に配管を通すにはスペースが必要になりますが、その際に関係するのが「床の構造」です。

〇二重床と直床

床の構造には「二重床」と「直床」というふたつの作り方があります。

二重床コンクリート躯体の上に、下地となる床を組んである作り。コンクリートと下地の床の間に空間があり、その空間に配管を通すことができる。
直床コンクリートの躯体に直接床が貼ってある作り。床下に空間がないので、そのままでは水回りの移動はできない。

そのため、二重床の場合は水回りの移動は比較的簡単にできますが、直床の場合には、水回りの床を二重床にして床下の配管スペースを作る必要があります。その際に、水回りのある場所だけ上げることはもちろん可能ですが、室内で段差ができてしまいます。そのため、バリアフリーや日頃の使いやすさを考えるなら、お部屋全体を二重床にする工事が必要になります。(キッチンの場合はレイアウト次第では、直床であっても壁の中に配管を通すことで移動が可能となるケースがあります。詳しくはリノベーション会社に相談してみましょう)

直床と二重床

〇ダウンスラブ

床下の配管スペースを確保するため、2000年代以降のマンションでは「ダウンスラブ」という水回りの下のコンクリートの床を一段下げた構造で作られている建物が増えてきます。

ダウンスラブがあることで、その中で配管を設置する分には床を上げる必要はありません。ただ、このダウンスラブの範囲を超えて水回りを移動する場合には、床を上げなければならないことがあります。

ダウンスラブのイメージ

ダウンスラブの例。一段下がった部分に配管が設置されています。

注意点4 配管交換もセットで交換

水回りをリノベーションする際は、給水管や排水管などの配管類の交換もあわせて検討しましょう。配管は、建物が作られた年代によって、材質や耐用年数が異なります。特に古い年代に建てられた建物の場合、耐用年数が短い材質の管が使用されていて、交換時期を過ぎている可能性もあります。そのまま使用していると漏水のリスクが高まりますので、リノベーションに合わせて交換しましょう。

配管の耐用年数

ただし、配管の交換が難しいマンションもあります。それが「スラブ下配管」という構造。1980年代以前の古いマンションで見られる構造で、排水管が床のコンクリートの下(下の階の天井裏)を通っています。

スラブは共用部分のため新たに穴をあけたり削ったりすることはできません。また、下の階の天井裏は下の階の専有部分になるため、工事をすることができません。

そのため、スラブ下配管の構造の場合は、配管全部を交換することはできないことはあらかじめ注意が必要です。

スラブ上配管、スラブ下配管イメージ

(左)スラブ上配管のイメージ (右)スラブ下配管のイメージ

注意点5 換気ダクトの移動

水回りの移動には給排水管だけでなく、換気設備と換気ダクトの移動も必要です。

排気ダクトに関しては、移動した先から新たに排気ダクトを設けることなども可能であり、大きな制約にはならないでしょう。

ただし、梁(はり)を貫通する必要がある場合などは、元の経路を大きく変更することが難しい場合もあります

注意点6 トイレの移動は難しい

トイレの移動には、キッチンやバスルームよりも制限がかかります。

トイレはつまりを防ぐために、近くに汚水専用の縦管(PS)があることがほとんどです。そのため既存の位置から大きく動かしたり、配管を複雑に曲げないといけないような位置に移動したりすると、詰まるリスクが高まります。そのためトイレをリノベーションしたい場合には、排水に影響のない範囲での移動か、機器の変更や空間を広くするといった別の手段で使い勝手を改善しましょう。

注意点7 管理規約での制限

通常、マンションは上下階が同じ間取りになっています。

これはPSなどを上下階で通して効率的に設置するという理由もありますが、生活音への配慮という意味合いもあります。

構造躯体や縦配を共有するマンションの場合、遮音にはどうしても限界があります。すべての生活音をあらゆる時間帯で遮音し、まったく音に心配のない建物を作ることは現実的ではありません。

したがって利用時間や使い方のパターンが異なる部屋を上下階でなるべく重ねない、という配慮がなされているわけです。

そのため、マンションによっては管理規約で水回りの移動を制限しているケースや下の階の居住者の了解を条件とするなどの制約を設けているところもあります。水回りを移動するリノベーションを検討する際には、あらかじめ管理規約で制限がされていないかを確認しておきましょう。

水回り移動のリノベーション費用の考え方

水回りを移動するには、間取り変更や床の作り方を変えるといった比較的大規模な工事が必要となることがほとんどです。

そのため、設備本体の費用以外に、大工工事、内装工事、水道工事、ガス工事、電気工事といった関連する工事も必要となります。どのくらいの規模で、どのような工事が必要になるかは、プランや建物の状況に寄りさまざまですので、一概に目安の金額を提示することは困難です。

まずは、考えている予算とリノベーションでやりたいことをまとめて、リノベーション会社に相談をすることから始めましょう。

リノベ会社の「現地調査能力」が何より重要

ここまで色々な注意点をご紹介してきましたが、配管類は見えない部分に設置されているため、自身が住んでいる家でもどのような状態になっているかを知ることは難しいことです。

しかし、移動を伴う水回りのリノベーションを検討するには、配管類の状況を把握することが一番重要なことといっても過言ではありません。

そこでポイントとなるのが、リノベーション会社の「現地調査能力」です。リノベーションのプランを立てる際には、まずリノベーション会社の担当者が現地を訪問して、現地調査を行います。その際に、室内の寸法を測ることはもちろん、図面を参照しながら、キッチンの下、点検口の中、ユニットバスの天井裏などを覗いて、配管類がどのように設置されているかを詳細に調査します。

この現地調査が不十分だと、本来できるはずのプランが実現できない、工事が始まった後でプランの変更を余儀なくされる、予算の追加が必要になるといった残念な結果を招いてしまいかねません。

そのため、水回りのリノベーションを検討する際には、リノベーション会社選びがとても重要になります。リノベーション会社の事例を確認したり、相談会に参加して担当者の話をじっくり聞いたりしましょう。

リノベーション会社を選ぶ際には以下のようなポイントを気に留めておくと判断の参考になります。

  • 水回りの移動を含めたリノベーション事例は多くあるか?
  • 質問に対して、できる、できない、わからない、その理由、をはっきりと説明してくれるか?
  • 現地調査では寸法を測るだけでなく、天井裏やキッチン下など見られる限りの場所を調査するか?

水回りを移動するリノベーションは大規模になり費用も多くかかることが一般的です。そのため、知見と実績のあるリノベーション会社を選ぶことが水回りのリノベーション成功の秘訣です。

水回りを移動したリノベーション事例

事例1 キッチンを移動してLDKの主役に

水回り移動リノベーションの事例

壁付けキッチンを移動して、Ⅱ型キッチンにリノベーション。囲われていたキッチンが一躍、家族の暮らしの中心の場になりました。アイランドタイプのシンクは床を上げなければならないことが多々ありますが、排水管をキッチンのカウンターの中を通すことで、床の段差をつけない工夫を施しています。

「キッチンから始まる家族の時間」_リノまま施工事例

事例2 お風呂をサイズアップしてゆったりバスタイム

水回り移動リノベーションの事例

マンションでも広いお風呂に入りたい!というお施主様の念願を叶えて、バスルームの位置はそのままでユニットバスを1216サイズから1616サイズへサイズアップ。また、元々は洗面所入り口とお風呂入り口の2箇所に段差がありましたが、配管を調整して、洗面所の入り口の段差を解消。バリアフリーにも配慮しています。

「想いは叶う!こだわりを実現したカジ楽なおうち」_リノまま施工事例

事例3 パイプスペース回りの工夫で広々玄関

水回り移動リノベーションの事例

無駄な空間になりがちなパイプスペースを上手く利用し、トイレの向きを変えて、シューズインクローゼット(SIC)を増設。ゆったりとつかえる玄関ホールになりました。

「Time for us」_リノまま施工事例

まとめ

水回りの移動を伴うリノベーションを検討する際のポイントをまとめると以下の通りです。

  • 水回りの移動には一定の制限があることをあらかじめ理解しておく。
  • 構造によって費用は大きく変わる。
  • 配管やダクトの設置状況、建物の構造がどうなっているかを、事前にできる限り詳しく把握することが重要。
  • そのために現地調査能力に長けたリノベーション会社を選ぶ。

皆さんもこのポイントを参考に、水回りのリノベーションをご検討ください。

なお、リノままはこれまで、水回りの移動を伴うリノベーションを数多く行ってきた実績があります。知識と経験の豊富な設計士がしっかり現地調査を行って、間違いのないプランを作り、丁寧な工事でリノベーション工事を完成いたします。水回りのリノベーションをお考えの際は、ぜひリノままにお任せください。

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