中古戸建ての築年数の考え方 古い物件はリノベ費がかさむ!

中古戸建ては築年数が古ければ古いほど、物件価格は安いです。
でも、古い物件ではリノベーション費用が高くなってしまいますし、建物の構造まで気になる戸建では
マンション以上にその差は大きくなりがちです。

結果的にお買い得なのはどちらなんでしょうか?

耐震基準によって異なる物件の特徴や、必要な工事のステップから、探すべき物件の条件をご説明していきます。

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リノまま編集部

リノままは「大きな企業の中の小さな設計事務所」として設計・工事・不動産それぞれの専門知識をもった少数精鋭のチームでひとりひとりのお客様と向き合っています

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中古戸建ての築年数の考え方

中古の戸建てを探す場合に、築年数が大きく費用に影響してきます。建物の構造自体に関わるリノベーション工事ができないマンションと根本的に異なる点がここです。

古い中古戸建ては当然ながら建物の構造に関わる部分でも様々な老朽化がみられます。老朽化を無視してそのまま内装だけのリノベ工事で済み続けると危険なケースも多々あります。

そのため古い中古戸建てをリノベーションしようとすると想像以上にリノベーション費用が膨張してしまい、新たに建て替えるのと費用があまり変わらなくなってしまうこともあります。

中古戸建ても当然ながら古い物件ほど物件価格は安くなります。しかしリノベ費が高くなることもあわせて考えるとどちらがよいかわからなくなってしまいます。

そのため築年数ごとに想定される建物自体への工事内容を考慮した上で物件探しをはじめることが重要なのです。

戸建ての耐震基準

築年数でチェックすべき最大のポイントは「耐震基準」です。

マンションの場合は「新耐震」「旧耐震」で切り分けて考えることが多いのですが、戸建ての場合は少し異なります。戸建では「現行基準(2000年基準/新・新耐震基準)」「新耐震基準」「旧耐震基準」の3つにわけてみていくことになります。

1995年の阪神淡路大震災をうけて、木造戸建てに関しては、2000年にも耐震基準の大きな変更があったからです。

表でまとめると以下の通りです。

・旧耐震基準 1981年(S56年)以前の建物
※建築確認申請が1981年6月1日以降に出されたものが「新耐震」になるため、建物完成時期で判断する場合は1982年(S57年)以前の建物だと旧耐震である可能性が高い
・新耐震基準 1982年(S57年)~1999年(H11年)の建物
・現行基準(2000年基準) 2000年(H12年)以降の建物
※2000年基準では鉄筋コンクリートの建物については殆ど基準の変更がなかったため、マンションの場合にはあまり意識しなくてもよい

大きな地震が発生し、その被害状況がみえてくるたびに耐震基準が厳しくなっていっているのがわかります。

そのため購入する物件が古くなるほど現行基準の耐震性を満たすために必要な「耐震補強」も大がかりになってくる、ということになります。

中古戸建てを購入した際に現行の耐震基準を満たすようにするかどうかはあくまで買主さまの判断にゆだねられているので、必ず耐震補強工事をしなければならない、というわけではありません。

ただ、建てられた年代によって建物そのものの「丈夫さ」が異なる、というのは事実です。

※マンションを中心に「耐震性」のことを詳しく知りたい方はコチラ
→リノまま【知る・調べる】マンションの新耐震基準と旧耐震基準とは

築年数ごとにみる戸建リノベーションの注意点

前項で述べたとおり、戸建てでは特に耐震基準によって、建物の造りが大きく異なります。

建物の造りが異なる分、中古の戸建てをリノベーションで必要になる工事も変わってきます。さきほどみた耐震基準ごとに年代をわけて特徴と注意点をみていきましょう。

旧耐震基準(築40年超)の戸建の特徴

まずは旧耐震基準の戸建の特徴は以下の通りです。

●基礎が布基礎または鉄筋が入って無い基礎の可能性があるため、基礎の補強が必要になる。
●当時は大工さんが感覚で耐力壁(筋交)を入れていることがあり、図面と相違することが多い。
●地盤改良工事は義務化される前なので、ほとんど行われていない
●建築確認はしているが、検査済証がないことが多く、増改築ができない場合がある
●全面的に耐震補強が必要
●給水排水管など劣化が進んでいるため交換が必要なことが多い
●外壁や屋根の劣化のため、屋根葺き替えや外壁張り替えなどの大掛かりな工事が必要なことがある
●外壁、屋根の塗装工事や雨樋交換など外部工事の費用がかかる

戸建リノベーションで費用がかさみやすいのは屋根や外壁などの外部工事ですが、それらに加えて、基礎の補強や大規模な耐震補強、さらには年数が経っているために配管の工事なども必要になってくる、というのがわかります。

新耐震基準(築25年弱~築40年程度)の戸建の特徴

続いて新耐震基準の戸建です。この年代になると基礎の補強はそこまで必須ではありません。

●基礎は鉄筋コンクリート基礎の布基礎やベタ基礎が多い
●在来軸組工法の他、2×4工法、パネル工法などもあるので構造の見極めが必要
●地盤改良工事は義務化される前なので、ほとんど行われていない
●部分的な耐震補強(耐力壁の追加、金物追加)が必要
●建築確認はしているが、検査済証がないこともあり、増改築ができない場合がある
●状況に応じて給水排水管など劣化が進んでいるため交換が必要な場合がある
●外壁、屋根の塗装工事や雨樋交換など外部工事の費用がかかる

屋根や外壁などの外部工事以外に部分的な耐震補強が必要になる、ということになりますが、旧耐震基準ほど大規模な改修は必要ないかもしれません。

2000年基準(~築25年弱まで)の戸建の特徴

現行基準の戸建では当然ながら耐震補強は必要ありません。

●基礎は鉄筋コンクリート基礎の布基礎やベタ基礎が多い
●在来軸組工法の他、2×4工法、パネル工法などもあるので構造の見極めが必要
●地盤改良工事は義務化されており安心。
●外部は劣化状況により、塗装工事などメンテナンスが必要な場合がある

築年数も比較的新しくなるので外部工事についても必要に応じて対応すればよく、内装のリノベーション工事中心に考えていくことができます。

築年数が新しくなるにしたがって、屋根や外壁といった外部工事、配管などの工事の必要性は減っていきます。それに加えて耐震補強の必要性も徐々に減っていきます。

この工事内容の違いが、「新しい物件の方がリノベーションのコストが安くなる」理由だということがわかりますね。

中古戸建ての選び方


>リノベーション事例「コペンハーゲンな家」|リノまま

建物自体の補強にコストがかさむと、リノベーション予算を圧迫してしまい、内装やインテリアのこだわりを断念せざるをえない…という残念な結果になりかねません。

戸建ての物件探しの場合、「築年数」の観点からは、「2000年基準」の建物から優先的にご検討して、少なくとも「新耐震基準」までの年代でおさえる、というのが賢い判断です。

「構造」や「工法」のキーワードも合わせると、「2000年基準」の物件の中で、「木造」「在来軸組工法」「2×4工法」の建物を選んでいくと自由度が最も高くコストパフォーマンスもよいということになります。

「こんな場合はどうなの?」など、個々の建物による疑問などもあるかと思います。

ご相談は随時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせくださいね。

その他、「広さ」や「土地」などについては、また次回の記事で。


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