「リノベーション向き物件」プロの見極め方とは?
- 公開日:2017.6.27
- 更新日:2023.11.1
「リノベーション向き物件」
リノベーションをしたい!とインターネットで情報収集していると、よくそんな言葉を目にするかと思います。
だけど、「リノベーション向き物件」とはどんな物件でしょう?
どんな基準を持って紹介される物件なのか知りたくありませんか?
「リノベーションに向く物件」と「向かない物件」リノままのオリジナルのチェックポイントをご紹介します。
リノベーション向き物件とは?
リノベーション向き物件、とされる物件の条件は以下の2つに集約されます。
・手軽に購入できる物件
・リノベ工事がしやすい構造の物件
「手軽に購入できる物件」とは、まずは「安い」ことです。
物件価格が安いと、リノベーション費用の方により予算をさくことができます。予算が十分にあれば、内装を全て一新して自分好みに作り替えるフルリノベーションもできるかもしれません。
ただ、これは単に物件が安い、というだけでは不十分で、安いだけで例えばアスベストの除去費用などが余分にかかってくる、といった物件になるとかならずしも「手軽」とはいえません。
要はそういった周辺コストも含めて「安い」物件がよい、ということです。
「リノベ工事がしやすい構造の物件」であれば、プランの自由度があがります。
リノベーションでは建物の構造によっては希望のリノベーションがそもそもできない、というケースが多々あります。おなじ物件価格でもリノベしやすい構造の物件を選ぶことでリノベーションの満足度はぐっとあがることでしょう。
リノベーションでどんな工事ができるかできないかや以下で詳しくお話しています。
⇒リノまま【知る・調べる】 リノベーションで「できること」「できないこと」を一覧表で解説
価格が手ごろな中古マンションの見極め方
マンションの築年数
リノベーションをすることを前提とした物件探しであれば、内装や住設機器が寿命(耐用年数)を迎えて、その分 物件価格も安くなっている築15年~20年前後からギリギリ新耐震基準になる築40年強までの物件がリノベーション向きの物件であるといえます。
そういった物件のなかにはすでに、物件の売主によってリフォームをなされている物件もあります。
リフォームがすでになされている物件というのはリフォーム費用が価格にプラスされてしまっていますので、「手の入っていないリフォーム前の物件」がよりリノベーション向きの物件といえます。
・住設機器が寿命(耐用年数)に近い
・リフォームがなされていない
そんな物件がリノベーションに向いており、コストコントロールにつながります。
余談ですが、内装がすごく汚かったり、住設機器に不具合があったりすると、建物の構造や躯体には問題がなくともなんとなく「この物件は良くないんじゃないか…」と物件そのものも悪いと考えてしまいがちです。
そこが逆に中古マンションのリノベーションを前提に物件を購入する方には狙い目です。
リノベ向きの物件は、上記のような心理がはたらくため、少し売りづらい物件であると言えます。
少し売りづらいので、売主様の売却事情(急いで売りたいなど)によっては価格交渉がし易いケースもあり、お得に購入できるチャンスがあるかもしれません。
古すぎるマンションには要注意
但し、1980年代前半以前の物件には少し注意が必要です。古い物件になればなるほど、現在は禁止されている有害物質であるアスベストを使用している可能性が高くなります。
アスベストの除去や廃棄には多くの費用がかかり、特に吹付材などの飛散しやすい形で使用されている場合には100万円を超えるコストがかかってきます。
また、1981年6月以前に建築確認がなされたいわゆる「旧耐震」の物件の場合は、住宅ローン減税や不動産取得税、登録免許税の減免といった税制優遇が得られない可能性が高く、物件価格は安くとも他で余分に費用がかかる、ということになりかねません。
古すぎる物件は物件価格以外で余分にかかってくる費用に注意が必要です。
⇒リノまま【知る・調べる】築50年のマンションは何年住める?メリットとデメリットを詳しく解説
これらもあわせて考えると、マンションの場合、築20年強(2000年前後の竣工)の物件でリフォーム歴のない物件が最も狙い目になります。
リノベーション工事がしやすい中古マンションの見極め方
マンションの建物の構造
大きく分けてマンションの構造にはラーメン構造と壁式構造があります。
ラーメン構造は柱と梁で構成されており、壁式構造は壁で建物を支えています。
ラーメン構造のマンションであれば柱、梁、外周部の壁以外は室内をスケルトンに出来るので、リノベーションをする場合間取りの自由度が高いといえます。
一方、壁式構造のマンションはリノベーションに少し不向きといわれています。
なぜかというと、構造上に必要で動かせない壁・壊せない壁というものがあり、間取りの自由度が低くなってしまうからです。
「壁をすべて取り払って広々としたリビングにしたい!」や「浴室を元々のスペースよりも広く!」といったリノベーション工事ができない場合があるので注意が必要です。
しかし、壁式構造には良いところもあります。
柱や梁が室内に出ないため、室内をすっきり広く使うことができます。さらに壁のバランスがよいため耐震性能には優れている物件も多く、古い年代の建物でも新耐震基準同等の耐震性を備えている、というケースもあります。
とはいえ一般的にはラーメン構造のマンションの方がリノベーションしやすく、壁式構造の場合は「壊せない壁」がどこにあるか注意が必要になる、ということになります。
床や天井の構造
その他、マンションの現況が二重床や二重天井なのか直床や直天井なのか、もポイントのひとつです。
もともと二重床になっている物件であれば、床下に配管を設置するスペースがあるため、水廻りの移動などは比較的やりやすいのですが、直床になっている物件では水廻り設備を移動すると段差ができてしまう、段差をつくらないように二重床にしようとすると天井高が低くなってしまう、といったデメリットがあります。
その他構造に関わるポイントではダウンスラブといってコンクリートスラブが凹んだ箇所があるかないか、や各部屋にエアコン用の配管用の穴があいているか、お風呂の追い炊きができるように給湯管用の穴があいているか、などいくつかチェックすべきポイントがあります。
管理規約によるリノベーション工事の制限
マンションによってはフローリングを禁止していて、床はカーペットにしかできない、とか、床の音が下階に響きやすいために床材の遮音規程が厳しい、とか、水廻り設備の移動を認めていない、といった管理規約や細則といったマンションの独自ルールによる工事の制限があります。
また、先に述べたエアコンの配管用の穴があいていなかった場合、コンクリートスラブに穴をあける施工を認めてもらえるかどうか、なども管理組合の規約によってかわってきます。
こういった管理規約によるリノベーション工事の制限がきつい物件ではどうしてもプランの自由度がなくなってしまいます。
これら工事のしやすさ、の視点でみても、2000年頃以降竣工のマンションであれば、フローリング禁止のマンションは殆どありませんし、ラーメン構造で二重床になっているマンションが大半です。
従って、手軽に購入できること、リノベ工事がしやすいこと、のどちらからみても築20年強、2000年前後竣工の中古マンションは最も狙い目なのは間違いありません。
リノベーション向き物件を探す方の多くは築20年~30年の物件をまずみていきながら、ここにあげたようなポイントをそれぞれチェックしていることが多いです。
中古マンションの物件選び・物件探しのコツはコチラで詳しく解説しています。
⇒リノまま【知る・調べる】中古マンションの物件選びの極意 物件調査や内見のポイントと注意点
⇒リノまま【知る・調べる】中古マンションの上手な探し方と注意点~引きこもり物件探しのススメ~
リノベーションに向かない中古マンションとは?
ここまで、リノベーションに向いている物件のお話をしてきました。
逆に、リノベーションに向かない物件について代表的な条件をいくつかお話します。
リノベーションに向かない物件とは、水廻りやキッチンの位置を大幅に変更するのに注意が必要な物件や費用が余分にかかる、リスクがある、といった物件です。
もちろん立地や価格などがバッチリ!といったケースではこれらに該当する物件を選ぶこともあるでしょう。
そういった際は事前に想定されるリスクについて十分理解した上で決断するようにしましょう。
スラブ下配管
築年数がかなり古いマンションで稀に上記のような「スラブ下配管」の物件があります。
スラブとはコンクリートのことを指し、スラブ下配管とは床下コンクリートスラブと階下天井板との間に設置された排水管のことです。
図の通り自分の部屋の排水が流れる排水管が下の階の天井裏を通っているということになります。その排水管の所有者は上の階の所有者か下の階の所有者、或いは共有部分とみなすのか、などがはっきりせず、問題を抱えているケースが多々あります。
自分の部屋から階下の他人の部屋を排水管が通っているので更新や移動が自由に行うことができませんし、万が一排管の劣化による漏水事故などが発生した際に上記の通り、「誰の責任になるか」がはっきりしないためトラブルになりやすいです。
これらからスラブ下配管の物件はリノベーションに不向きな物件といえます。
在来工法の浴室
マンションの浴室の工法は大きく分けるとユニットバス、在来工法、ハーフユニットバスがあります。この中で在来工法やハーフユニットバスの浴室はややリノベーションに不向きといえます。
「ユニットバス」とは工場で生産・加工した部材や部品を現場に運び込み、組み立てるだけでつくれる浴室のことを指します。なので、トイレや洗面と一体化したものでなくとも実際には「ユニットバス」と呼ばれるものですし、現在の日本国内のお風呂は9割以上がユニットバスともいわれています。
ユニットバスは防水工事を行う必要がないため工事にかかる期間が短く、工事費を抑えることができるというメリットがあります。
対して「在来工法」は昔ながらの浴室のつくり方のことです。
周囲に防水加工を施してから、コンクリートや壁で床をつくり、浴室をつくり上げていきます。
こういった在来工法の浴室を移動したい、広げたいといった工事を行う場合、コンクリートでつくられた壁や床を壊したり、防水加工を施したりする必要があるため、手間とコストが大きくかかってしまいます。
「ハーフユニットバス」は「在来工法」と「ユニットバス」を組み合わせたものですが、こちらも工事の手間やコストがユニットバスと比べて大きくかかります。
稀なケースではありますが、マンションによっては浴室の壁を構造上解体できないということもあります。
こういった場合には、浴室を広げたり移動したりすることができなくなってしまいます。
解体工事ができず、既存のスペースにユニットバスを設置するとなると、浴室のサイズが現況より小さくなってしまう可能性もでてきます。
もちろん普通のユニットバスではなく、映画に出てくるような猫足のバスタブを使用したい、ヒノキのお風呂をつくりたい、といった希望の方は在来工法でお風呂をつくることになりますが、そういった強い希望が特にない場合は在来工法のお風呂のマンションを選ぶと費用が余分にかかる分、リノベーション向きではない、といえます。
中古戸建てのリノベーション向き物件の見極め方
戸建てのリノベーション向き物件についても基本的な考え方は殆ど同じです。「価格が手ごろな戸建の物件」かつ「リノベーション工事がしやすい物件」がリノベーション向き物件といえます。
ポイントになるのは「築年数」と「構造」です。以下でそれぞれみていきましょう。
戸建の築年数
木造の建物は2001年に耐震基準が大きく変わっています。そのため、耐震基準からざっくりと、「旧耐震基準」「新耐震基準」「2001年基準」の3つに分かれます。
「2001年基準」をクリアしていない戸建の物件では安心して住まわれるためには耐震補強が必要になってきます。そうするとどうしてもリノベーション費用は膨らんでいきます。
また、戸建ての場合はマンションと異なり、屋根や外壁といった建物の「外側」の部分の劣化も気になります。築年数が古い物件では屋根や外壁の補修、場合によっては土台となる基礎工事の補修まで必要になってきます。
こういった建物そのものの補修工事にお金がかかりすぎると、内装工事にかける予算がなくなってしまいます。そのため、耐震補強の必要がなく、外側部分の劣化も比較的少ないであろう「2001年基準」の中から物件を選ぶのがおススメです。
もちろん、それぞれの物件のメンテナンス状況にも大きく左右されますが、築年数で考えると「2001年基準」で建てられている2001~2002年以降の竣工物件(築20年強まで)がリノベーション向き物件です。
戸建の築年数の考え方は以下でもっと詳しく説明しています。
⇒リノまま【知る・調べる】中古戸建ての築年数の考え方 古い物件はリノベ費がかさむ!
戸建の構造
戸建ての物件で最もリノベーションの自由度が高いのは「木造」の「在来軸組工法」で建てられたものです。
「在来軸組工法」とは柱や梁で骨組みをつくり、地震や風圧に耐えられるように筋交いなどの耐力壁を設けるという工法です。筋交いなどの位置やバランスに支障が無ければ、比較的間取りも自由に変えられるので、リノベーション向きです。
「2×4工法」(ツーバイフォー工法)は「在来軸組工法」とは対照的に工場で生産したパネルを現場へ持ち込んで組み立てていく工法です。マンションの「壁構造」に近いイメージにはなるものの、必要な壁をしっかりと計画しておけば間取りなどは比較的自由に変更できるので、こちらも実はリノベーション向きです。
一方で軽量鉄骨造の戸建てや鉄筋コンクリート造りの戸建てはリノベーションできる内容への制限が大きくなるので注意が必要です。
戸建の構造の考え方は以下でもっと詳しく説明しています。
⇒リノまま【知る・調べる】 中古戸建てのリノベは「構造」によって費用が変わる!
リノベーション向き物件の探し方と注意点
ここまでマンションや戸建ての「リノベーション向き物件」といえる条件をみてきましたが実際にどうやって物件をさがせばよいのでしょうか?
3つのポイントをお話します。
まずは築年数で絞り込む
まずはリノベ向き物件の条件はマンションでも戸建でも「築20年強が狙い目、それより古い物件は新耐震基準のものから選ぶ」というのが基本です。
新耐震基準の物件の竣工年は1982年頃以降になるので、築20~40年前後の物件をみていきながら、その他の条件をチェックしていくとよいでしょう。
建物の構造などのチェック
続いてそれらの中から建物の構造などの条件をチェックしていく、ということになりますが、これらの見極めは専門性を要するため自分たちで進めたり不動産会社にみてもらったりするのはなかなか困難です。
物件探しとリノベーションを一気通貫でまかせられるワンストップリノベーション会社に相談しながら進めるのがおススメです。
例えばマンションの構造や管理規約による制限などであれば、リノベーション向き物件を探しなれているワンストップリノベーション会社であれば、SUUMOなどのポータルサイトの情報や販売図面をみただけでもある程度の見当はつけられます。
例えば
・図面に柱型の記載がない/5階建て程度までの低い建物→壁構造の可能性あり
・図面上にフローリングの表記がない、お部屋の写真が全てカーペット敷き→フローリング禁止の可能性あり
といった具合に予想をたてて調べていくと実際に内見する前にリノベーション時の注意点や内見時に細かくチェックすべきポイントがわかるのです。
ワンストップリノベーション会社をはじめとする建築やリノベーションに詳しいパートナーと物件探しを進めるメリットです。
ワンストップリノベーションについては以下で徹底解説しています!
⇒リノまま【知る・調べる】 「ワンストップリノベーション」vs「不動産とリノベを別々に依頼」比べてみました!失敗しない会社選びとは!?
「リノベーション済み物件」の考え方
先に述べたように、「リノベーション向き物件」を探す上ではできるだけ内装のリフォーム歴のない物件がおススメです。
なぜならリフォームやリノベーションがすでになされた物件ではその費用が物件価格に加算されており、物件が少し高くなる分、自分たちがリノベーションに費やすことができる予算が減ってしまうからです。
でも、もしリノベーションの工事内容や内装に大きなこだわりがなく、「土間だけはどうしてもつくりたい」「キッチンはどうしても気に入ったものにしたい」といった特定のポイントだけを重視したいということであれば、「リノベーション済み物件」はよい選択肢の一つになります。
戸建てでもマンションでも「リノベーション済み物件」は不動産会社やリノベーション会社がまるごとリノベした物件なので、建売住宅のような位置付けになります。要は自分たちでイチからリノベするよりや安くできあがるものの、内装や設備、間取りは一般受けしやすい無難なもので仕上がっている、ということです。
もちろん、しっかりつくられた「リノベーション済み物件」であれば住む上では問題ありませんし、特定のポイントだけ部分リノベーションをおこなうことで自分好みにアレンジすることも可能です。
部分リノベーションもアリ、と考えている方にとっては良質な「リノベーション済み物件」もリノベ向き物件といえるかもしれません。
リノベ済物件+部分リノベーションについては以下で詳しく説明しています。
⇒リノまま【知る・調べる】安さとこだわり重視!リノベ済みマンションの部分リノベーションとは
まとめ
「リノベーション向き物件」とは「価格が手ごろ」で「リノベの自由度が高い」物件です。そのためにはマンションでも戸建でもまずは「築年数」、次に「構造」をみていって、さらにマンションでは「管理規約」などもチェックしていって見極めていくものです。
「リノベーション向き物件」を探すのが難しいのは
・価格が手ごろにみえても、余分に費用がかかる物件もある(アスベストや耐震補強など)
・リノベの自由度に影響する建物の構造を見極めるには専門性が高い
といった点から「本当にリノベ向きかどうかは簡単にはわからない」ことにつきます。
リノベーションでは詳細な現地調査をしてみないとできる/できないがはっきりしない要素も沢山あります。
安易に考えずに信頼できるパートナーを見つけてからスタートすることを強くおススメします。