マンションの平面図と寸法 リノベのプロがこっそり教える寸法豆知識

物件をみても図面をみてもなかなかリノベーション後のお住まいをイメージすることは難しいもの。

内見のときは今住んでいる方の家具や荷物が沢山おいてあったり、逆に何もないガランとしたお部屋だったり、なかなか「広さ」のイメージがつかめません。

リノベーションのプロは内見にいくとき、図面をみるとき、様々な要素をみて、「寸法」をとっています。
「寸法」のイメージができると図面の中におとしこんだときの家具の大きさや通路の幅などがわかってくるのでぐっと完成後のイメージが湧きやすくなります。

今回はあなた自身も今からすぐ使える「寸法」の豆知識をこっそりお知らせします。

「理想の暮らし」は「寸法」によって「現実の毎日」にぐっと近づきます!

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リノまま編集部

リノままは「大きな企業の中の小さな設計事務所」として設計・工事・不動産それぞれの専門知識をもった少数精鋭のチームでひとりひとりのお客様と向き合っています

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リノベーションの平面図でみる「寸法」

リノベーションの打ち合わせでは様々な図面を用いて、リノベーション後のお住まいを表現しています。

物件探しのときにみていた不動産会社の平面図とは異なり、それぞれの部分の寸法や天井高なども記載されたものになります。

従って「寸法」の知識を身に着けておくと、この平面図で表現された広さや高さがどのくらいのものなのかがグッとイメージしやすくなるのです。

まずこの平面図と寸法の基礎知識をみておきましょう。

リノベーションの打ち合わせで使用する図面のサンプル

図面の寸法は全てミリ単位

「寸法」を考えるとき、私たちは日ごろcmやmでみることが多いです。

何センチ、何メートルって言われるとなんとなくおよその大きさがイメージできるのではないでしょうか?

これがリノベーションの打ち合わせに入っていくとmmの数字が図面に沢山ならんでいきます。

1000mmっていわれてもなかなかイメージしづらいと思いますが、単に1mのこと。

もちろんリノベーション会社の担当者はイメージしやすいように何センチですよ、何メートルですよ、と説明してくれますが、図面にかかれた数字はあくまでmmのものなので、今のうちに少しずつ慣れておくのをお薦めします。

「ここは1000!」とか「奥行が450!」とかmmの数字で寸法を話していると、プロっぽくてちょっとかっこいいですよ。

図面の縮尺

リノベの打ち合わせ用の図面では必ず欄外のどこかに「縮尺」や「S=~」といった記載があります。実際のお住まいの大きさに対してどのくらいの割合で縮小した図面なのか、がわかるようにするためです。

縮尺がわかれば実際のお住まいでの1mは図面上の何cmにあたるかがわかるので、定規をあててはかってみることでお部屋の大きさや通路の広さなどがイメージできるのです。

リノベーションの打ち合わせでは1/50の縮尺の図面を用いることが多いので、図面上の2㎝が実際のお部屋での1mに該当します。下写真のような三角スケールをあてながらみていくとわかりやすいですね。

三角スケールを図面の縮尺とあわせると、図面の中の1m、2mといった寸法が即座にわかるので便利

寸法の大切さ

こういった図面の中の世界と実際のお住まいをつなぐのが「寸法」です。

実際に物件を内見したとき、「居住中」の物件であれば今住んでいる方の家具や持ち物があるけれど、本当は見た目の印象よりも広くなるかもしれません。

逆に「空室」の物件であれば「何もない」がゆえに広々と見えてしまいます。

でも、ここにキッチンをもってこよう、ダイニングテーブルはこのあたりに設置しよう、テレビはこのあたりがいいかな、といった具合にあなたの物を並べていくと見た目の印象よりも狭くなるかもしれません。

リノベーションで間取りはガラっと変えてしまうとはいえ、そもそもの家全体の「広さ」は変わりません。

寸法を測ってみたら希望の家具がおけそう、ソファーをおいたら通路が狭くなりそう、など印象だけにとらわれず数字で客観的に判断できるようになります。

内見のときにリノベーション後のイメージを描くのはなかなか難しいですが、「見た目」だけに騙されないよう「寸法」をしっかり押さえておく必要があるのです。

「キッチン」の寸法は錯覚の宝庫!

対面キッチンは意外とスペースを使う

寸法を考えるときに要注意なのが「キッチン」!

古い物件をご案内していると、壁付けのキッチンによく出くわします。

「リノベーションでキッチンを移動してこのあたりにもってきたい」「対面にしたい」そんなご要望の方は非常に多いです。

キッチンの移動にあたっては、レンジフードのダクトがどちらに抜けているか、パイプスペースがどこにあるか、といった制約がありますが、その辺の専門的な話はリノベーション会社にしっかりみてもらえばよいこと。

みなさんが頭に入れておいた方がよいのは、「対面キッチンは意外とスペースを使う」ということ。

キッチンを対面にすると意外と背中側にスペースが必要です。

キッチンそのものの奥行が600~800mm、キッチンの前に立つには通路が必要なので通路幅で800mm以上。

もしご夫婦2人で料理をされる、といった場合には1,000mm以上の通路幅がないとなかなかすれ違えません。

キッチンに立った時の背中側には電子レンジや炊飯器や食器を置くキャビネットが欲しいところですが、それらの奥行は450mm~550mmが一般的。

もちろん冷蔵庫もキッチンの背中側に置くのであれば、冷蔵庫の奥行が700mm~800mm程度。

キャビネの奥行よりも冷蔵庫の奥行にあわせて通路をとらないと、「冷蔵庫の前だけ狭い!」「冷蔵庫が開けづらい」なんてことになりがちです。

するとどうでしょう?

キッチン700mm前後+通路800mm前後+背面のキャビネ等(冷蔵庫あわせ)700mm前後
=合計2150~2200mm程度

対面キッチンの後ろ側には最低でも2200mm=2.2m程度以上のスペースが必要になります。

図にもあるように、ペニンシュラ型、アイランド型のやや大ぶりなキッチンを使うと2500mm=2.5m程度のスペースが必要になってきます。

どうですか?

実際に物件の内見時にこのお話をしてキッチンがどの辺の位置になるかを示してあげると、「思ってたよりキッチンの位置を前に出さないといけない」「ダイニングやリビングのスペースがなくなっちゃう」とびっくりされる方も多いです。

キッチンの幅も要注意!作業スペースの確保を!

キッチンについては幅(間口)も要注意です。1800mm、1950mm、2100mm、2250mm、2400mmなど150mm刻みでいろいろな幅のキッチンがありますが、意外と忘れがちなのは「作業スペース」です。

間口の大きなキッチンでは、コンロや流し以外の「作業スペース」が広くとれます。

切った野菜をおいておいたり、できた料理を一時的に並べてみたり。

ぎりぎりの広さで考えるといざ住みはじめたら窮屈、なんてことになりがちです。

逆に幅の大きなキッチンを置きたい!って希望があれば、マンションのお部屋の形によっては、LDKへの入り口をふさいでしまう可能性があるので配置に注意が必要です。

ご夫婦で一緒に料理をしたい!作業スペースをしっかりとりたい!なんて方はⅡ型とよばれるキッチンなんかを考えてみるのもよいでしょう。

Ⅱ型キッチンで作業スペースをしっかりとった事例(【リノまま】リノベをめぐるスタイリッシュな冒険)

キッチンの選び方については以下もご覧ください

リノまま【知る・調べる】キッチンの種類いろいろ

リノベーションでも「こんな風にしたい!」とこだわる方も多いキッチン。広くみえたり狭くみえたり、実は錯覚の宝庫なので、今の「見た目」に騙されないように気を付けましょう。

ダイニングテーブルは椅子を引くスペースを忘れずに!

「人が一人食事するのに最低限必要なテーブルの広さ」は「幅600mm×奥行400mm」だそうです。

すると4人掛けのダイニングテーブルは「幅1200mm×奥800mm」、6人掛けのダイニングテーブルは「幅1800mm×奥800mm」が「最低限」必要な大きさ、ということになります。

ただ実際にはもう少し大きめのテーブルを置いた方が使いやすいです。

一方で忘れてはいけないのは椅子を引くスペースです。

椅子を引いて座るためには「+750mm」のスペースが必要ですし、「座っている人の後ろが通れるようにする」にはさらに通路分の寸法が必要です。

テーブル分800mm+正面側の椅子の後ろ750mm+反対側の椅子の後ろ750mm=合計2300mm程度

「とりあえず座れる」スペースを確保するだけでダイニングのスペースは2.3m程度以上の幅が必要になるということです。

ついつい忘れがちな「椅子を引くスペース」。テーブルの大きさだけ考えてると「思ってたより狭い!座りづらい!」なんてなってしまいますので要注意です。

LDKの注意点

おうちの「主役」ともいえるLDK、中でも特にこだわる方が多いのがキッチン。

とはいえ、「LDK」はリビング、ダイニング、キッチンをかねている場所ということ。

キッチンとして使うために必要な広さ、ダイニングとして使うために必要な広さ、忘れがちな「通路」として必要な広さ、これらを考慮してLDKの広さを判断していかないと、肝心のリビングのスペースが「狭い」なんてことになりがちなので注意しておきましょう。

寝室に必要な広さ

リノベーション前提で物件をご覧になるお客様から「寝室はシンプルにして狭くてもよい」「寝室のスペースをおさえてLDKを広々としたい」なんてご要望もよくききます。

そんなとき、一般的なベッドの大きさが頭に入っているとイメージしやすいです。

シングルベッドは幅1000mm×長さ2000mm~2100mm、ダブルベッドは幅1400mm×長さ2000mm~2100mmです。

「長さ」の方は寝るところの長さだけで2000mm程度ですが、頭のところに板なんかがついたタイプのベッドだともう少し大きくなって2100mm弱くらいになります。

もちろんキングサイズなどさらに大きなサイズの場合はこれらを目安に考えればOKです。

あとは寝室にベッドを置く、あるいは布団をしくとして、その他、通路がどのくらいほしいか、ナイトテーブルなんかをどのくらい置きたいか、なんかを考えると必要な広さはイメージできます。

そうすると、内見のときに、「この部屋の広さはここまででいいから、今の壁をもっと手前に動かしてその分リビングを広くしよう」なんてイメージが少しわきます。

ウォークインクローゼットが欲しい!でも大きさは注意!

「この辺をウォークインクローゼットにしたい!」よくご案内のときにお客様からそんな声をききます。

よくあるのは、「それだけだとスペースが足りない、もっとスペースを使いますよ」というケース。

ウォークインクローゼットはその名の通り「ウォークイン」で「歩いて入れるクローゼット」!歩いて入るための「通路」のスペースを忘れがちなので要注意です。

「人ひとりが正面を向いてギリギリ歩けるくらいの通路」の幅は600mm程度。

キッチンの通路のように人がすれ違うことまでは考慮しないのが通常です。

続いてクローゼットの大きさですが、男性の服を収納するためには600mm程度、女性の服を収納するためには550mm程度の奥行が必要になります。

すると、
クローゼット分550~600mm+通路600mm+クローゼット分550~600mm=1800mm程度

どうでしょう?

通路があって両側に服をかけられるウォークインクローゼットには約1.8mのスペースがほしいところ。

思ったよりも場所をとりませんか?

お風呂でゆったり過ごせる「寸法」は?

最後にお風呂の話。リノベーションでも多くの方がユニットバスをいれています。

よく不動産会社とかメーカーのショールームの方とお風呂の話をすると「いちにーいちろく」とか「いちよんいちはち」とか聞きなれない言葉が飛び交っていませんか?

これはユニットバスのサイズのこと。

「1216」とか「1418」とか4つの数字を並べてサイズをあらわしています。

例えば「1418」の「14」はユニットバスの下図の縦方向のサイズが140cm、「18」は横方向のサイズが180cmということです。

マンションの場合は戸建よりもユニットバスのサイズは少し小さ目で「1216」「1317」「1418」といったサイズのものが一般的です。

古いマンションだと「1116」といったさらに小さなサイズを使っていることもあります。

「足をのばしてゆったりお風呂に入りたい」そんな方はこの「12」「13」「14」といった数字にご注目!

「12」は湯舟の縦方向のサイズが120cm、「13」は130cm、「14」は140cmということなので、いわゆる「湯舟の広さ」に直結します。

「たかが10cmの違いでしょ!」なんて侮ることなかれ!

実際に浸かってみると「広い!」とか「窮屈かな!」とかかなり反応は分かれます。

マンションによっては構造上の問題や他のスペースとのかねあいでお風呂のサイズを大きくできないケースや大きくできても他の間取りに問題がでてきてしまう、といったケースが多々あります。

お風呂の大きさ自体は普段あまり意識したことはないかもしれませんが、「自分たちにとって最低限どのくらいのサイズがほしいか」は早めに考えておいた方がよいポイントです。

メーカー各社のショールームにいくといろいろなお風呂が飾ってあります。

靴をぬいで実際に中に入ることもできます。

もちろんお湯はためてないので、服はきたままですが、広さの感覚はつかめます。

ショールームでは大きなサイズの商品が目立つところにたくさんありますが、それらよりも「12」「13」「14」といった実際に自分たちが使う可能性が高いサイズのものを探し出して実際に入ってみるのをおすすめしています。

同じ「13」サイズでもメーカーによって、商品によって広く感じられるものもあるかもしれませんので。

物件をみにいくとどうしてもキッチンとかリビングに目を奪われがち。

特にリノベーション前提だと、「キッチンをこのあたりにしたい」「ここの壁を壊して全部リビングにしたい」なんて話で盛り上がります。

ついついお風呂、洗面、トイレといった場所はさらっと見て終わりたくなりますが、どれも毎日使う場所。

これからの暮らしを楽しくするために感覚を研ぎ澄ませてみましょう。

まとめ

こうやっていろいろな「寸法」の話をしながら物件をみると、リノベーション後の姿が少しイメージしやすくなります。

「理想の暮らし」は「寸法」によって「現実」に近づいていきます。

だけども要注意!

ここであげた「寸法」はあくまで「一般的」なもの。

新しい住まいでは「絶対このキングサイズのベッドを置きたい!」とか、「ダイニングテーブルにあこがれのブランドのものを使いたい!」とか、先に「置きたい家具」が決まっているのであれば、同行するリノベーション会社の担当に先に伝えておきましょう。

そんな家具を主役にしたときにしっかりスペースがとれるかどうかも一緒にみてもらえます。

もちろんあなた自身の憧れの「暮らし」のために「どうしても使いたい!」というものに限定しておくのが理想です。

物件探しを始める前に沢山考えたとおり、予算も時間も限りがありますので。

「あれも、これも」ってなって迷子になってしまうのも、目の錯覚に踊らされて「こんなはずじゃなかった」ってなるのも避けたいですもんね。

寸法豆知識おさらい

◎通路の幅
・ウォークインクローゼットの入り口など人が正面を向いて通るギリギリの幅:600mm
・マンションの廊下 850~900mmくらい
・キッチンの後ろ側 最小700mmだと狭い!一人で使う前提で800mm(すれ違えるのであればもっと広めに)

◎間仕切り壁の厚さ 70mm

◎ベッドの大きさ
・シングル 幅1000mm×奥2000mm
・ダブル  幅1400mm×奥2000mm

◎冷蔵庫の大きさ(設置位置) 奥700mm~800mm

◎洗濯機置場の大きさ 
幅640mm×奥600mm
(ドラム式なら幅740mm×奥600mm)

◎ソファーの大きさ
・1人掛け:幅900mm×奥900mm
・2人掛け:幅1700mm×奥900mm

◎ダイニングテーブルの大きさ
・4人掛け:最小で幅1200mm/一般的には1350mm以上×奥800mm
・6人掛け:幅1800mm×奥800mm
・ダイニングテーブルの椅子も含めた必要スペース(椅子をひいて座る):+750mmスペース必要

◎デスク
  幅900mm×奥600mm

◎テレビ台
  最小で幅1000mm~通常は幅1500mm程度以上×奥400mm

◎キャビネット 例
・幅1200mm×奥600mm
・幅900mm×奥600mm

などなど。


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